私が現役だったころの開発局には「安着祝い」と称して、新しく赴任してきた職員を肴に一杯飲むという文化がありました。
それはできるだけ早く新しい人の"ひととなり"を知りたいということと、新しい人には「職場にはこんな人たちがいますよ」と言う触れ合いをできるだけ早く持たせる両方の効果があったのだと思います。
昨年末に私のいる島に28歳という若者が一人新たに配属になってきました。
あまり周りに話しかけるような子ではないように見受けましたが、見ていると島で飲みに行った様子がありません。
仕事で私と接点があるような関係でもなくて、気になっていたのですが一向に「安着祝い」的な懇親の場は開かれなかったようで、年末の忘年会がその子と一緒に飲む初めての機会になりました。
しかし忘年会では全然深い話などできません。
とはいえ私も(何かを言い出すような立場じゃないしなあ)と思っていたのですが、さすがに近くにいながら雑談一つするわけでもないような関係が不満になって、ついに彼の上司や別な若者を誘い出して「飲もうよ」という企画をすることにしました。
そういう提案をすればみんな反対するわけでもなく、言い出しっぺの私が場所も選定してようやく4人での飲み会ができました。
私が「昔は安着祝いという文化があってさあ」と言うと、「いやあ我々もちょっと前までは会ったんですがねえ。やはりコロナで『集まるな』という指令が効きましたね」とのこと。
まあみんな一人ひとりが結構忙しいのと、案外チームで何かをするということがなくて、一人ひとりが自分の仕事をこなすということが定着していったようにも思えます。
ハラスメントが問題になり、あまりプライベートに関わったり何かを強要することを良しとしない文化が広がっていることもあるのかもしれませんが、昭和のおじさんとしてはちょっと見過ごせなかった感じです。
で、そうやって集まって飲んでみると結構面白い話が合ったり情報交換ができたりと楽しい時間が過ぎました。
話してみて初めてわかる意外な一面やそれぞれの経験談を聞いてみるとやっぱり面白い話が沢山出てきます。
ハラスメントを恐れながら「彼女いるの?」と訊くと、「いい雰囲気だと思ったんですけど、告白したら『全然そんなつもりはない』と言われて振られました(涙)」とのこと。
(うむうむ、それが人生だ)と昭和のおじさんはその飲み会の雰囲気を楽しんでいるのでした。
昔は皆理由をつけてはお酒を飲むのが本当に好きだったんですねえ。