北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

異次元の少子化対策 ~ 「こども連帯基金」は今年の流行語にノミネートされるかしらん

2023-01-28 23:12:27 | 社会保障を考える

 

 岸田総理が「異次元の少子化対策」と発言したことで、「異次元ってなんだ」「具体的に何をするのか」と世間は色めき立ちました。

 そうしたことの具体的な方向性となると、その分野の国の審議会の議論を見ていると、かなり先行した意見が出ていることがあります。

 そのつもりで例えば「全世代型社会保障構築会議」が昨令和4年12月16日に出した報告書を読んで「少子化対策の項目」を見てみると具体的に取り組むべき課題として一定の方向性が出されています。

 →「全世代型社会保障構築会議 報告書」(令和4年12月16日) https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/zensedai_hosyo/pdf/20221216houkokusyo.pdf

 これを見ると、膨大な内容をすべて書き写すことはしませんが、

(2)具体的に取り組むべき課題としては
 ①全ての妊産婦・子育て世帯支援として、
  ◆妊娠時から寄り添う「伴走型相談支援」と経済的支援の充実(0~2歳児の支援拡充)、
  ◆全ての希望者が、産前・産後ケアや一時預かりなどを利用できる環境の整備
  ◆出産育児一時金の大幅な増額
  ◆不妊治療等に関する支援

 …が挙げられており、続いて

 ②仕事と子育ての両立支援(「仕事か、子育てか」の二者択一を迫られている状況の是正)として、
  ◆保育の枠を確保できる入所予約システムの構築
  ◆子育て期の長時間労働の是正・柔軟な働き方の促進
  ◆育児休業取得の一層の促進と時短勤務の支援
  ◆非正規雇用労働者の処遇改善と短時間労働者へのさらなる支援
  ◆育児協業給付の対象外である方々への支援

 …が挙げられています。

 そして(3)今後の改革の工程として、「…子育て世帯に対する経済的支援を合わせたパッケージを、恒久的な財源を確保しつつ継続的に実施」ということと、「安定的な財源について、企業を含め社会全体で連帯し、公平な立場で、広く負担し、支える仕組みの検討」ということが強調されています。


 つまり、何をすべきかという具体的な政策はここに書かれていることが中心に打ち出されてくるでしょうし、その一方でやはり財源をどうするかということが議論の中心になることは間違いありません。

 どんな異次元のアイディアが出てくるでしょうか。
 

      ◆


 さて、政府の議論ではここまでですが、私が私淑する慶応大学の権丈善一教授は、しばしば自民党を始め各種の政治団体・経済団体に招かれた際に、「子育て支援連帯基金」というアイディアを提案しています。

 これは少子化対策の財源をただ財政の見直しという労多くして益少ない作業や消費税増税と言う短絡的な決断に求めずに、その中間として社会保険の制度を利用して、「受益は年金・医療保険・介護保険さらには雇用保険にも及ぶ」という建付けで、これらの会計から拠出して子育てを支える費用をねん出するという提案。

 実際少子化になることで年金会計は不安が増大しますし、医療保険や介護保険など高齢期に出費が偏っているものを若者が支えるという制度趣旨からは支える側の人数が増えることが制度の安定につながります。

 さらには少子化の改善は雇用保険にも益が及ぶことから、これも制度の輪に加えることもあるでしょう。

 社会保険となると被用者である労働者だけではなく使用者である企業側も負担をすることになりますが、これとて、将来の労働力のみならず消費者の増大と言う観点から、少子化は企業側にとっても見過ごせない課題であるという視点で拠出を説明できるとしています。

 税率を上げる度に政権がぐらつくほどの衝撃力がある消費税などと違って、財源調達力としての社会保険には非常に強い力があります。

 いざ提案するとなると「取りやすいところから取るだけだ」という批判が出るのが目に見えるようですが、将来の不安を取り除くために恩恵を受ける者が支援・負担するという制度思想から言うととても興味深く思えます。

 図の中で「税財源」が破線で表されていますが、ここに税金が投入されるのかどうかは「ゼロ」ではないかもしれませんが、その額たるや極めて心もとないので作成者の山崎史郎さんは破線にされたのでしょう。

 さあ「こども連帯基金」は今年の流行語大賞にノミネートされるかな。

 

コメント
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