「アギーレ・神の怒り」「フィッツカラルド」など、とんでもない僻地の過酷なロケーションで知られたドイツ出身のヴェルナー・ヘルツォーク監督が撮ったベトナム捕虜もの。
捕虜になるアメリカ兵(ドイツ生まれという設定だが、特に意味はない)を演じるのは「マシニスト」で役作りで30キロ減量したクリスチャン・ベール。今回も牛にひきずられるわ、目に見えてげっそり頬がこけるまでやせ衰えるわで、熱演だけれど、脱出するのにそれほどはなばなしい冒険譚があるわけではなくかなり平板。
ベトナムだとアマゾンの奥地ほどとんでもない僻地という感じはせず、ロケの迫力はさほどではない。
クラウス・キンスキーがいなくなると、三船のいない黒澤やニーノ・ロータのいないフェリーニよりもっと大きな穴がぽっかり開いたよう。
総体的にベトナム人がまるで野蛮人として描かれているのは見ていて反発を覚える。もともとそういう体質があったのだが、過去を舞台にしていると目立たなかっただけでもあるのだろう。
出だしの爆撃を妙に耽美的に撮っているあたりは「地獄の黙示録」みたいだが(「地獄…」は「アギーレ」の影響を受けている)、あとは大方のアメリカ製ベトナムものと大きな視点の違いはない。
(☆☆☆)