法廷画家という設定が珍しいのと、その出入りする法廷にこの十数年の日本で起きた凶悪犯罪の数々(を、思わせる事件)が取り上げられるのが一組の夫婦のごく小さな世界と自然につながるクロニクルの目安になるのが面白い。
リリー・フランキー自身が絵描きだから、描いている姿がさまになっている。(法廷画そのものは別の人が描いているのがエンドタイトルに出る)
病気の父親を絵でしか出さない描き方が、直接写してしまったら出てこない安らぎを感じさせる。ラストの天井を埋めた画が、夫婦の一緒に過ごしてきた時間の積み重ねを見せるよう。
長まわしの演出も「二十歳の微熱」とは別人のような長足の進歩。
(☆☆☆★★)