prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「蘇りの血」

2009年11月27日 | 映画
小栗判官と照手姫の話、というのはもともと説教節や浄瑠璃、歌舞伎でもさまざまなバリエーションで取り上げられているのを、文字通り説教臭くなく蘇りを元から人間が持っている生命力と男女の間の磁力に求めているのが現代的。

古い説話の読み直しや、時代考証に囚われずかなりデフォルメした衣装デザインや、始原のパワフルな自然の取り入れ方など、ちょっとパゾリーニを思わせる。ただ、全体に少しきれいすぎ。元の説話だと手足がきかないばかりか目も見えず口もきけず耳も聞こえず皮膚病に全身覆われているなんて調子なので、そこまではムリなのはわかるが。

比較的最近では市川猿之助が歌舞伎「当世流小栗判官」やスーパー歌舞伎「オグリ」でも取り上げていたが、判官が手足が利かない場面が長くなるのでそこはどうしてもたるく感じる。ここでも初めのうち独特のデフォルメやお話をわかったものとしてとっとこ進んでしまうような作りに戸惑い退屈したが、終盤の死と再生の場面は多いに盛り上がる。

フィルメックス上映での質疑応答で、魯迅の「鋳剣」がヒントになっているとの豊田利晃監督の言あり。鈴木清順監督・高倉健主演で企画されて実現しなかった幻の映画。
監督自身藤原竜也主演で「宮本武蔵」を一億かけたオープンセットを作ったがポシャッて二億の負債がどこかに(個人ではない)あるというからシャレにならない。
この映画は十日で撮りあげたというが、その時の状態をわざわざ「ナチュラル・ハイ」だと形容したのは、まあシャレになるが。

Twin Tail(主演の中村達也のdrums、照井利幸のbass、勝井祐二のviolin )の音楽が強烈。まず音楽ありきだったというのも納得できる。ライブの即興演奏を編集して使ったのだそう。ミュージシャンの持つ身体性が先に出る性格をよく生かした。
さっそくネットでライブ音源を捜して聞く。

12月19日よりユーロスペースにて公開。「蘇りの血」公式サイト
Twin Tail アルバム「すべては許されている」

(☆☆☆★)


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