リストラされた労働者が姉の病気を治すため闇組織に依頼して自分の腎臓を提供する代わり金をもらうつもりが腎臓だけ取られて、せっぱ詰まってリストラした社長の娘を誘拐するが、予定に反してその娘を死なせてしまい、社長は会社を離れて残酷な復讐に走る。
被害者加害者がねじれてどちらがどちらといえなくなり、残酷さと暴力がエスカレートしていくさまが凄まじい。
暴力描写は様式化され、悪夢のようで現実以上にリアル。
電機メーカー社長(ソン・ガンホ)といっても、高卒で自分で機械を作るところから叩き上げた人らしく、自分で電機器具を自在に操り、拷問に使ったりする。単純な資本家=ブルジョワ=悪というわけではないのだが、犯行を煽るサヨク女(ペ・ドゥナ)は単細胞的な見方しかしない。そのあたり、どこの国でもそうらしく、韓国でもサヨクが金正日に会いたがったりしたのだね。
誘拐犯姉弟が聴覚障害者という設定で、内なる音を再現しようとするように音の使い方が非常に凝っている。5.1chで聴くと、細かい効果音の位置や移動など、丹念にやっているのがわかる。
映像センスも水の中から見上げたアングルや、アパートの部屋から部屋へ横切っていく移動など凝っていて、メイキングによると韓国映画では使わなかった「腐敗したような」グリーンを多用し、現像所に破棄されてしまったところもあるという。
サイレント映画的なセリフに頼らない表現を多用して、特に暴力描写絡みの省略法が絶妙。代わりにストーリーが呑みこみにくいところが出た。
組織の構成員は一人だけだと警察が言っていたのに、ぞろぞろ現れて復讐するラストがひどく唐突な印象。韓国での公開時もずいぶん批判されたらしい。興行的には大失敗だったとソン・ガンホがインタビューで語っていた。
(☆☆☆★★)