三軒の家がコの字型に並んでいる並びに妙に執着するあたりのオブセッションを自然に実物の並びを見せていくことで納得させてしまう。どこまでロケに手を加えているのかわからないが、ああいうかなり不自然な家の並びが二つも三つもあるという処理は見事なもの。
ドローンでぐうっとカメラが上がって並びを俯瞰で見せるあたり、ドローンの使い方としても新鮮。
香川照之の隣人の会話が成立しないずれっぷりは「CURE」の荻原聖人以来。
コトバを無効化することによって依って立つ根拠を奪い従属に導く存在というか、中身が空っぽのカリスマといった存在という点で一貫している。
プロセスを使って車が地面の上を走っているようでなく宙を飛んでいるように撮っているのも「CURE」以来。
黒沢清監督の空間と光に対する嗅覚が一段と磨かれてほとんど超絶技巧的になってきている。
タルコフスキーを屋内外を逆にしたような、カーテンが外に向かってはためているという奇妙に不安を煽る光景。
竹内結子が料理好き、という設定の割に実際にどんな料理ができているのか曖昧(はっきり曖昧にしているのがわかる)なのがじりじりと不安になってくる。
一方的に香川が「家族」を支配しているのかというとそうでもなくて、自ら支配され調子を合わせている、あるいは合わせるようになるというのが不気味なリアリティがある。
西島秀俊が恰好いいのに、というかだからこそ自然に常識を逸脱してしまう感じをよく出した。
犬でさえこの一種異様な支配の輪からは逃れていない。意思が通じないという意味で逆に家族の一員ということになるのかもしれない。
ストーリー・テリングが流麗なのでとっつきやすいけれど、その一方で常にストーリーを前進させるロジックを逸脱する力が働いているスリル。
(☆☆☆★★★)
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