ポロックの作品は偶然のように絵具をキャンパスに垂らして作っていくのだが、実はそこに一種数学的な法則が半ば意図的に加えられているという偶然と必然の交錯といったモチーフが、映画の中のAIの思考法の進化に持ち込まれている。
エヴァ役のアリシア・ヴィキャンデルの顔の部分のすこぶる端正な美貌と手脚や胴体がスケルトンになっている組み合わせの妙のデザインに、人間性と人工物との境界の曖昧化が鮮烈に出る。これ自体が現代美術のひとつの作品になっているようで、アカデミー賞で並みいる超大作を抑えて特殊効果賞を獲ったのも、発想自体の新しさと射程の広さにあるのだろう。
透明になっている部分は人間になりきっていない箇所の表現とも思え、しかも実際の人間をモデルにするのではなく「マルガレーテ…の肖像」の画の中の女性の服装をエヴァが身にまとうという形で「人間化」する。
やたらと電源が落ちるたびに部屋が非常灯で真っ赤に照らされ、カメラが監視していないようでしているあたり、「2001年宇宙の旅」のHAL9000を想起させる。
全体に画も音もミニマムで静謐で、外の緑を借景風にしたり日本庭園風に切り取られた空間があったりと、すこぶるアーティスティックなSF映像を見せる。製作費があまりかけられなかった(といっても1500万ドルだが)せいもあるだろう。ジョージ・ルーカスの超低予算の長編デビュー作「THX1138」をもうちょっととっつきやすくしたような感じでもある。
まったく口をきかない日本女性キョウコなんていうのも出てくる。意思を持たない典型が日本人みたいな捉え方をされているように思えるのは考えすぎか。
(☆☆☆☆)
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