新作の6時間半もの仮編集版を抱えたまま完成も公開もままならないでいる44歳のドキュメンタリー監督ベン・スティラーの上映会に若いファンを名乗る男アダム・ドライバーが現れ、いろいろ嬉しがせることを言いながら自分の作品を見てほしいと接近する。
一方でベンと妻でプロデューサーのナオミ・ワッツとの仲は表立っては満足しているがところどころ綻びを覗かせている。
アダムのLPとVHSテープに囲まれたレトロ風のアートそのものといった暮らしっぷりに魅了されたベンと何かとアダムに協力するが、気づいたらナオミの父で大物ドキュメンタリー作家のチャールズ・グローディンを巻き込んで新進監督として華やかに売り出すことに成功し、ベンは踏み台になったことに気付く。
おもしろいのは、ドキュメンタリー作家みたいに外見は社会の良心みたいに見える仕事をしていても、建前と本音の見栄と功名心と過剰なプライドの板挟みになっていること。
なかなかベンがバカ長い版を切れないのも作家性に忠実というより子供っぽい自己中心性と執着心の現れっぽい。
それからベンはアダムの時制の入れ替えや知っていることを知らないような顔で語る作り方をドキュメンタリーとしてはアンフェアだとむきになって批判するが、大物ドキュメンタリストのグローディンがそれくらい普通に許されることだろうといった顔しているので振り上げた拳のやり場がなくなってしまうあたり、周囲の大人の事情を汲みとれないアダムの浮きっぷりが情けなくも苛立たしい。
アダムがずうっと帽子をかぶっているのは「8 1/2」のフェリーニの分身である監督役マストロヤンニみたい。ささやかな権威と自己防衛と見栄の象徴であることが、自分が利用されたのだとはっきりわかるあたりで投げ捨てるところではっきりする。
クライマックスでスケートボードで走るアダム・サンドラーの姿、というのはやはり「LIFE!」のアダムの姿を頭に置いてだろう。あれが喜劇ならこちらは悲喜劇。
「ロッキー3」の「アイ・オブ・ザ・タイガー」が自分をアゲる曲として使われるあたりの時代感覚。
ニューヨークのアーティストの世界をおしゃれなところと
実はチャールズ・グローディン、ずいぶん年取っていたのでエンドタイトル見るまで誰だかわからなかった。
(☆☆☆★★)
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