それだけ権力側のメディアに対する対応法が発達したこともあるだろうし、レッドフォード自身「大統領…」は主人公の二人の記者を英雄として描きすぎたという反省の弁を述べていたように、ジャーナリズムそのものの立ち位置が複雑になりすぎて単純に権力を撃てばいいというわけにいかなくなっているのだろう。
報道で事実を報道して真実に迫る際、厄介なのは完全無欠にそれが事実であると証明するのはまず不可能だということ。
何かしら不十分な箇所を指摘したり揚げ足とりをしたり、時には報道した人間や機関の信用性の方を毀損したり、あるいは偽情報をつかませて後で暴露するといった反撃は簡単にできるのであり、立証責任をジャーナリズム側が一方的に負うとなると、これはどうしたって不利。
末梢的な批判や論点そらしなど、ネガティヴな方に引っ張っていく方が元から有利なのであって、とにかくムダな情報を流して話をそらしてしまうのに追われてブッシュが軍の義務をきちんと果たしたのかという核心部分がお留守になってしまう様子がありありと描かれている。
その話をそらす手口をケント・ブランシェット扮するメアリー・メイプスがきちんと言葉にするのがクライマックスになっていて、そこからメディアに対するリテラシーを汲むべきなのだろう。
それほど描き込んでいないが、この当時はそれほど大きな影響力を持っていなかった(というよりこの事件で影響力が認識された)ネットメディアがさらに発達した分、既成の「権威」とそれに見合った「責任」のあるメディアはさらに後退している。
「CBSドキュメント」(60ミニッツ)は前はTBS系列で深夜にせよ放映していたのを楽しみにしていたのだが、ああいう進取の気質があって商業的にも成功した報道番組というのはおよそ先細りになっている。新鮮なネタを取るにせよていねいに裏付け取材するにせよそれだけ手間つまり費用がかかるから経済原則からすると不利だからだ。
(☆☆☆★)
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