prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ワーテルロー」

2016年08月16日 | 映画
ソ連が国をあげて製作した大作「戦争と平和」(1967~68)三部作で「まあ阿呆みたいな馬鹿でかさ」(荻昌弘)のスケールのナポレオンのロシア侵攻を描いたセルゲイ・ボンダルチュクが、イタリアのプロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティスに迎えられて、ナポレオン率いるフランス軍とウェリントンを頂くイギリスをはじめとする連合軍とのワーテルローの戦いを描く1970年作。

今ではとても再現不可能な膨大な数のエキストラを動員した(再びソ連軍を借り出したそうです)えんえんたる戦闘シーンはさすがに凄い。

「戦争と平和」だと茫洋としたカメラアングルで捉えることでかえってスケールがでかく見えたところがあるのだが、イタリアの至宝というべき名カメラマン、ジュセッペ・ロトゥンノが撮っていることもあって、画面の捕まえ方はもっと様式的で美的。

大軍がタブローをなして動く様式性とか、騎兵隊の突撃のスピード感など、西側のショー精神が注入された感はあり。ときどき間抜けなスローモーションが入るのは困るが。

「戦争と平和」でヘリコプター・ショットを使ったのを19世紀の視点で撮っていないと批判されたのに対抗してか、連合軍が四角い陣を組んでいるのをフランス軍がぐるりから攻めるのをヘリから大俯瞰で撮るといった具合に陣形をよりわかりやすくするのに進化させて使っている。

ロッド・スタイガーのかなりエキセントリックで汗っかきのナポレオン像は、どこか「ヒトラー最後の12日間」のブルーノ・ガンツのヒトラーを思わせる。
クリストファー・プラマーのウェリントンが最初出てくる時にロシア人みたいに毛深いメイクなのはよくわからない。

国際的大作だから英語版にしないといけないという事情はわかるにせよ、ナポレオンが英語を話しているというのはどうも気がいきません。
しかし考えてみると、フランス映画でナポレオンその人を正面から扱った映画というのはサイレント時代のアベル・ガンスの「ナポレオン」から後、これといったものはないのではないか。

これが興行的に失敗したもので、キューブリックの「ナポレオン」の企画が頓挫してしまったらしい。



8月15日(月)のつぶやき

2016年08月16日 | Weblog