prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「オーバー・フェンス」

2016年10月24日 | 映画
始まってしばらくは刑務所の話かと思うような雰囲気で、いい歳をした男たちが制服制帽でうるさい監視つきでなんだかおぼつかない手つきで材木細工をしている。
やがて職業訓練校だとわかってくるのだが、こういう木工細工で生計を立てるくらいの稼ぎになるのだろうかという気はするし、第一生徒の中で特にとうが立っているのが、どうせこんな訓練受けたって就職口などあるかよといったフテたような態度をとって、教える側もまた特に励ますようなことなど言わない。

喫煙室があってみなそこでタバコを吸うのだが、これだけタバコを吸っている割合が高い集団というのは近頃珍しい気がする。それだけ意識が高いとはいい難い集団ということだろう。別に犯罪を犯しているわけでもなく、失業したり離婚したりといった事情があってドロップアウトした「だけ」(と言っても、今の日本ではそれが大変)なのだが、なんともどよんとした雰囲気に浸かっている。

函館の路面電車が走っているひと気のない風景ががらんとして寂しげでもある一方、ちょっとひろびろとして気持ちよさそうでもある。

蒼井優が風呂を使わず(使えず)、暗い台所で縮こまって水で身体を拭いているシーンの痛々しい感じ。

冒頭から鳥が空を飛んでいるカットが何度も挿入され、蒼井優がたびたび鳥の真似をしてみせ(この身体表現見ていると、舞台の経験のある人だなとわかる)、オダギリジョーと夜のデートで鳥の羽根だけが宙から降ってきて、さらに羽根を撒きながら街を自転車で走るという詩的表現として生きている。
鳥が自由の象徴であることは明白だが、実際の鳥は出られるのに出られなかったりする。
ラストシーンも「見せない」ことがものを言って、エンドタイトルが出たところで、これで終わり?と思うと同時に解放感に満たされる。

オダギリジョーの無精ヒゲが伸びないのが不思議。
(☆☆☆★★)

オーバー・フェンス 公式ホームページ

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10月23日(日)のつぶやき

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