監督のウィリアム・キャメロン・メンジーズは「風と共に去りぬ」の特殊効果・第二班監督を務めた人で、その貢献は「風と共に去りぬ 幻のメイキング」で詳しく紹介されていた。
あの映画は実際のアメリカ南部で撮られたシーンが一つもなく、荘園やお屋敷の多くはマットペインティングによる絵合成、駅の構内で何百何千ともつかない傷病兵が横たわっているシーンの兵の半分は人形で傍らのエキストラが操作すると人間に見えるといった工夫をして、スケール感を倍増させていたわけ。
その技術者としての腕をふるって、この映画ではプロダクション・デザイナー(日本でいう美術監督)と監督を兼任している。
製作費はそれほどかけられなかったのだろう、インベーダーが着陸する丘のホリゾントを生かして作り物っぽい異様な雰囲気を出したり、警察署や研究所が極端に簡素化されたほとんど「第四惑星の悪夢」みたいな空間になっているのが面白い効果。
見慣れた人たちが突然人間味を失う恐怖、というのは50年代SFホラーの典型なわけだが、フーパーのリメイクが丘の向こうを見せないで人間が人ならざる者になったのをさまざまなテクニックをこらして描いたのに対し、オリジナルでは丘の向こうをさっさと見せ、変貌した人間をどんといきなりアップで無表情とたまにのぞかせる薄笑いを見せるといった具合にわかりやすい表現で通している。
人々が襲われるのを砂のくぼみが生まれたり埋まったりするので表現するのは、アリジゴクがイメージの源だろう。
すごくものものしく天文台を撮っているのは、いかにも宇宙時代が到来するぞという50年代的感覚に思える。
本物の兵器を出してばんばん砲撃するのを見せられるのが迫力あるし、またアメリカはこのように無敵のアメリカ軍が守りますといったアピールになっている。
子供が主人公でも学校がまったく出てこないのでリメイクより20分以上短くなった。リメイクだと二人の女の先生が敵役と味方に別れていたが、ここでの味方は女の医者。精神分析がはやったのと通じるものがある気がする。
おかしかったのは、母親が午前四時に起こされたというのにベッドから起きたらびしっとメイクを決めていてヘアスタイルも毛一筋の乱れもないこと。いかにも昔のハリウッド映画。
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監督・美術 ウィリアム・キャメロン・メンジーズ | |
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