移民問題を扱ったドラマとするとこの二つが交錯するまでが長すぎるとも言えるけれど、話を運ぶよりは一つ一つの場面のゆっくりした感触と間合いから来るユーモアそのものを味合うのことになるのがアキ・カウリスマキらしい。
その中でひどく異質なのが人種差別主義者の集団の硬直した精神と行動で、その違和感から来る不快感と共に、連中のアラブ人とユダヤ人の区別もついていない馬鹿さ加減がじんわりとおかしい。
さらにフィンランドみたいに「進んだ」ように見える北欧国でも異人に対する公的な、まわりくどくもっともらしい排斥政策がとられているのもわかる。
カウリスマキ作品ではエンドタイトルに「雪の降る街を」が流れる「ラ・ヴィ・ド・ボエーム」があったが、初老の男が経営するレストランが客寄せに(軽薄にも!)スシ・バーに衣替えするヘンテコな日本趣味がかなりわざとのよう。
インテリア代わりに買っていく日本の本が池波正太郎の「真田太平記」や藤沢周平の「孤剣 用心棒日月抄」の、それも文庫本だったりする。三省堂のブックカバーがかかったままになっている本も置いてあるのもおかしい。
(☆☆☆★★)
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