強いて言うなら、黒澤明の「夢」の戦争や核の描き方に近いかもしれない。
全編、「HOUSE」の頃のような切り貼り的合成と原色の多用によるキッチェな映像や、商業映画デビュー前の自主映画「いつか見たドラキュラ」のような吸血鬼というモチーフの登場など、出発点に帰っていく感じもあるのだが、ただ戻っただけでなく渦を巻いて上昇していっているみたい。
いつどこの話というのが無化した世界。切り貼りにより映像から空気感や距離感がなくなり、線的・遠近法的な時間や空間構造もなくなっている。
黒澤明や新藤兼人、マヌエル・デ・オリヴェイラなど昔だったら引退しているような高齢の監督がリアリズムを離れた一種独特の境地に踏み出したのとおそらく共通している。
単純に去りゆく人間が若い者にバトンを渡すというよりは、同じ地平に立って生きているし同時に同じように死に向って歩んでいるとでもいった世界観。
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