prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「誰かに見られてる」

2018年05月02日 | 小説
 ポストの中に入っていた何も書いていない大判の封筒の中には、ポストの前にいる私の写真が入っていた。
 目をこらして確かめたが、横顔も、着ているブラウスもスカートも確かに私の持っている、それもお気に入りの服だ。
 夜にかなり離れた場所から撮ったものらしく、全体にモヤがかかったようになっていて画面もザラついた感じだったが、確かに私の写真だ。
 足が震えてくるのを感じながら、私はどこから撮ったのか、それらしい角度に顔を向けた。私のアパートは交差点の角にあるが、その斜向かいの奥まったあたりの別のアパートがそれらしい。
 灯りがついてはいるが、遠目からはまるで何も見えない。その暗がりの中で、何かが光ったような気がしたが、目をこらしてもやはり何も見えなかった。
 私は震える足を励まして自分の部屋に向った。封筒は投げ捨ててしまった。
 鍵を開けるまでの時間がおそろしく長く感じたが、とにかく自分の部屋に入って中から鍵をかけて一息ついいた。
 誰がこんなことをしたのか。心当たりを考えてみた。このところネット上で粘着されたような覚えはない。それらしいことをしそうな元カレもいない。
 ふとベッドの上を見ると、また上書きのない封筒が置いてある。
 いやな胸騒ぎを感じながら、それでも封筒の中身を出して見た。
 やはり、ベッドのそばにいる私の写真が入っていた。すぐそばでカメラを構えて撮った写真だ。今の私そのままの服装だ。
 私は、写真に撮られた方向に顔を向けた。
 誰もいない。
 それでもどうにも気になって、写真が撮られたであろうあたりに立って、ベッドの方を見てみた。
 ベッドの傍らには私が立っていた。写真そのままのポーズで、私と同じ服装で。
 私は、ゆっくりとスマートフォンを出して私に向けた。

「黄金の指」

2018年05月02日 | 映画
ジェームス・コバーンがスリの名人、ウォルター・ピジョンがその長年の相棒でこの年配ふたりにマイケル・サラザンとトリッシュ・ヴァン・ディーヴァーの若いカップルの四人のドラマだが、サラザンがまったくの青二才でコバーンの貫録に負けっぱなしで、若い美人の彼女のディーヴァーもなびいてしまう、
という展開になるのだが、そこからのひねり方がちょっとこれ違うのではないかと首をひねった。
端的に言って、サラザンが絡んだ展開になっていない。

見せ場のスリのシーンは静かな手際の良さが命なだけに、商業映画でもブレッソンの「スリ(掏摸)」的な簡素さに自然に寄ってしまうのが面白いところ。

カモの眼を引き付けて油断させる美人役のトリッシュ・ヴァン・ディーヴァーが本当に美人で、登場シーンあたりは普通のいでたちなのがカモの眼を奪う役に入ってからはホットパンツやミニスカ、テニスルックといった、いかにも目を引く恰好をするのが観客サービスにもなっています。

ジョージ・C・スコットとこの前年に結婚していたのだが、死別するまで一緒だったのね。「チェンジリング」など共演作も多い。

昔の地上波用に作られた吹き替え版での放映。ジェームズ・コバーンは小林清志、マイケル・サラザンは安原義人。
懐かしいというより、このあたりの声優の吹き替えだと慣れ親しんだという感じになる。

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5月1日(火)のつぶやき

2018年05月02日 | Weblog