だからクライマックスの締めくくりの窓の外には当然のようにそれまで降っていなかった雪を降っている。
ユリシーズとは長く世界を巡った末に妻のもとに帰る英雄オデッセウスのことで、クリスチャン・スレーターが父親に無理やり読まさせたと語る「イーリアス」は「オデッセイアー」と共もにギリシャ叙事詩の双璧。
スレーターとプライスの出発点が近い(が、違う)のを端的に示しているということだろう。
「愛を読む人」でも主人公が最初に読む本は「イーリアス」だったような気がする。あちらでは一種の定番なのだろうか。
オデッセウスの長い(自分勝手な)旅をした末に妻の元に戻るキャラクターとプライスと妻グレン・クローズのキャラクターがだぶらせているのかもしれない。
ワンシーンだけ出てくる先輩の女性作家がエリザベス・マクガヴァン。「ダウントン・アビー」の伯爵夫人とはまたえらい対照的なささくれた雰囲気。
作家周辺の話だから当然とはいえ、二大名優のゆったりしてニュアンス豊かなセリフのやりとりの中に、プライスの下品な単語が混ざる違和感がつまりこの「作家」の本質を出す。
「天才作家の妻 40年目の真実」 - 公式ホームページ
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