それでいて、画面に違和感がまったくない。
奈良が舞台(というより自治体も人も含めてこの映画自体の製作の母体になっている)で、旧家の木造建築の重量感と質感、日本家屋独特の光の諧調などが見事に出ている。
奈良という文字が画面の後ろの方の看板にちらっと写るが、いかにもな名所の紹介がかった見せ方をしていない。
その中で息子を事故で失ったため男の子を作らないと家が絶えてしまう、といういささか時代錯誤な感じすらする悩みを抱えた主人公を、加藤雅也みたいに日本人離れした長身で彫りの深い顔立ちの人が演じるのがおもしろい。
跡継ぎがいない人が種子会社の社長をしているというのがアイロニカルで、初めの方に種無しカボチャならぬ種ありカボチャを画面で見せすらする。
ラスト近くで小津安二郎の「東京物語」のセリフをそっくりそのまま再現するところといい、すました顔でユーモアを出していると思しい。
田中要次と息子の町田啓太の両方とも加藤の会社の社員で、同時に田中と加藤は開発に伴う土地の売却に関わっているというあたり、地方の煮詰まった人間関係がわかる。
加藤が再婚していささか遅いが改めて男の子を作るという迂遠な案は措いて、娘の石橋静河の結婚相手を養子に迎えるのか、というよりその前に相手がいるのか、どんな相手なのかを順々にわからせていくプロセスが練れていて静かなタッチだが飽かせない。
母親の白川和子がなんともいえず生々しい。
悩みの種は尽きないが、会社の社長らしく命令する時は甘い顔を見せずびしっと命令するところを見せるのがメリハリが効いている。
雨の音、鐘の音など自然音が繊細につけられている。
今さらだけれど石橋静河の鼻の形が母親の原田美枝子そっくり。
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