prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「殺しが静かにやってくる」

2019年11月26日 | 映画
勧善懲悪を破ったラストで有名なマカロニウエスタンで、中島らものエッセイでは誇張はあるにせよ上映後の映画館が暴動寸前になったとか、双葉十三郎や都筑道夫の評でも悪く懲りすぎて後味が悪すぎるいった否定的な評価が主だった。
それがだんだん熱心なファンが支持し続けて評価が上昇してきて、マカロニというのがジャンルとしては滅びたせいもあって新しい文脈で見られるようにもなっているようだ。
あと、バッドエンド映画が増えて前ほど反感を買わなくなっていることもあるかもしれない。

改めて見直すと善玉のトランティニャンと悪玉のクラウス・キンスキー以外の第三者、野盗扱いされている集団があまり悪そうに見えず賞金をかけられて一方的に、それも山場の決闘の後に殺されてしまうのが妙に目立つ。

設定が冬山というのが特異なマカロニウエスタンなわけだが、監督のセルジオ・コルブッチが実はコミュニストだと聞くと、彼らに山に隠れるパルチザンめいたニュアンスを感じてしまう。

「山いぬ」(原作はイタリアリアリズムの代表作家ジョヴァンニ・ヴェルガの「グラミニアの恋人」)なんかでも理不尽な法制度の改変で土地を取られ怒りに任せて暴力をふるいそのまま山に逃げ込んだ男が描かれていたが、山というのが身を落とさざるを得ない一般人の一種のメタファーになっている可能性もある。

ほとんど凍り付いたような冬山で全編が展開するのが一種特異な美的感覚を見せている。




11月25日のつぶやき

2019年11月26日 | Weblog