まずタイトルでUPOPIAの文字がさかさまに出てくるところに、文字通り「ユートピア」の反語的なニュアンスが出た。
そういうスパイク・リーらしいプロテストの姿勢も見られるけれど、音楽が前面に出るとやはりポジティブな方向に気持ちがいくのが音楽の効能という感じ。
舞台装置が吊り下げられた鎖の中で、そこをすいすい暖簾みたいにくぐり抜けてミュージシャンが出入りするというのも、鎖で直接縛られるよりは一見ソフトに自由を奪っている世界と、その逆の鎖に囲まれているがそれは通り抜けられるのだと言った相反するメッセージがアイロニカルに出た。
楽器はすべてミュージシャンの手持ちで、マイクも持たずにすべて電波でとばしているのがテクノロジーの進歩と、ほとんど人間だけが舞台にいるようなミニマリズムが共存している。