製作時期('75)からして「ダーティハリー」や「フレンチ・コネクション」の影響は歴然。上の言うことを聞かない直情決行型の刑事(相棒のシャルル・デネがハリーの相棒に顔が似ているのが御愛嬌)のキャラクターに、暴走する列車を生かしたアクションと。
とはいえ、ジャン=ポール・ベルモンドの身体を張ったアクションが何と言っても見ものだし、こういう部分はおよそ古くならない。
チャップリン、キートンやジャッキー・チェンなど危険なシーンを自分でやるアクションスターは他にもいるが、身軽でスポーティな彼らと比べるとベルモンドはかなり大柄で体格がいいので重さが感じられてまた違うスリルが出る。
上半身裸になってみせるシーンを見るとがっちりしたいい体格だけれど、今の男性スターみたいにムキムキの筋肉がついているわけではない。
傾斜のきつい屋根の上でずりずりっと滑り落ちるあたり、「ルパン三世 カリオストロの城」みたいで、実写の分重みがある。
演出的には義眼の殺し屋の描き方が凝っていて殺し屋の主観で画面半分くらいが義眼のアップで占められていたり、しきりと鏡に写して見せたりしている。
マネキンが林立している倉庫でのアクションはキューブリックの「非情の罠」にもあったが、影響があるのかどうかわからない。これが作られた75年にはすでにキューブリックは巨匠の域に入っていたからどこかで見ていて参考にしてもおかしくはないのだが。