老いた画商が一目見て気に入った署名が入っていないある肖像画の売買にまつわる駆け引きの話でもあるが、それ以上にかなり偏屈に不器用に生きてきたであろう画商の娘と孫との関係が修復され祝福されるのを、肖像画のモチーフとなぜ署名が入っていなかったか(ロシアイコンに署名が入っていないようなもの)によって象徴したストーリーと受けとるべきなのだろう。
絵画の商業的な価値というのはひどく曖昧なところがあるから投機的にもなるのだが、ストーリーが向かうのはむしろそういう商業性とは逆方向みたい。
思いきって陰影の深い撮影が見事。