鶴屋南北役の立川談春が奈落で逆さまになって登場すること自体が虚実の逆転を表しているのだろうけれど、「東海道四谷怪談」自体が忠臣蔵の裏返しということがわからなくなっている、どころか四谷怪談も忠臣蔵もどうかすると知らない日本人が増えてきているのではないかな。ここのところ映画にもテレビにもなってないし。
八犬伝となると、もとがバカ長くてNHKで放映されていた人形劇もほとんど散逸しているのだが、それでも辻村ジュサブローによるデザインの人形は強い印象を残した。正直、生身の人間がやっていても八犬士のキャラクターに関しては今回の実写化は負けている。
屋根の上のアクションシーンがかなり力が入った出来なのだが、締めくくりが曖昧。屋根から落ちてどうなったのか、ぽんととんでしまってよくわからない。
山田風太郎の原作がすでに馬琴と北斎のやりとりの実と八犬伝の虚とをよじり合わせた作りだったらしいが、役所広司と内野聖陽の共演はじめ実のパートの方が芝居は見ごたえある。芝居自体が虚ではあるのだが。虚の方は主にVFXの見せ場という感じ。