監督のタマラ・コテフスカは北マケドニア出身で「ハニーランド 永遠の谷」が米アカデミー賞にノミネートされ、日本でもアップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺で公開された。
背丈が3.5mある操り人形アマル(アラビア語で希望という意味)にヨーロッパ各地を旅をさせ、その声をパスポートも持っていないシリアの少女が当てるというユニークな方法を採用している。
前に「FLEE フリー」というドキュメンタリーにしてアニメーションという映画があったが、あれは顔バレを防ぐためにアニメにしたので、同じように不自由な立場にある人(たち)を表に出して、さらに国内にいる少女たちと観客とが想像でつながるというわけだろう。
人形は行く先々では歓迎されるが異人でもあり、荒く編まれた格子から操っている人たちの顔も見える。籠の鳥という寓意と、しかし実際に入っている人たちはなろうと思えば自由に身になれるという二重の意味があるように思う。
実物の少女はローマ教皇を知らない。ユダヤ人かと聞き返したりする。キリストはユダヤ人のはずだし、キリストの生前弾圧したのがほかならぬローマだったりする。
ヨーロッパで吹き荒れているイスラム差別もいながらに知っているだろう。