裕次郎の背中を丸めてポケットに手を突っ込んでいる姿はこの映画の製作の3年前の1955年に公開された「エデンの東」のジェームス・ディーンそっくりだなと思うと同時に(公開当時もよくそう言われたらしい)、ディーンとは対照的な根っからの向日性というか、ひねくれそうでひねくれない明るさ、屈託のなさは他の登場人物が形容する通り。
もっともそれはかなり場面が進行してからで、初対面の女性の胸をさわって「僕の憲法」などと言う出だしなど、裕次郎の兄かと思うようなふるまいでいささか呆れた。
さわる相手が裕次郎と結婚する前の北原三枝ではあるのだが。
そこから始まって気がついたらわざとらしくなく移行しているのだから不思議。
タイトルバックで文字通り陽の当たる坂道を下ってからまた上がって屋敷に着くのがどこか象徴的。
メインタイトルで監督の田坂具隆の名前が撮影の伊佐山三郎と連名で出るのは「湖の琴」の飯村雅彦に先立っているが、製作会社はあちらは東映でこちらは日活なのだからおそらく監督の一貫した方針ということになる。
医者が患者の前でぷかぷかタバコをふかしているのだから、時代の違いというのは驚くべきもの。