タイトルバックの絵(あとでオークションにかけられている)をはじめ、出てくる絵画や家具や調度など、すごく贅沢。
アラン・ドロンの役が美術商だからばかりではなく、ジャンヌ・モローの出番などヴィスコンティかと思うくらい。美術担当は「天井桟敷の人々」のアレクサンドル・トローネル。
考えてみるとジョセフ・ロージーとヴィスコンティは「失われた時を求めて」の映画化を望んで果たせなかった同士でもあった。
後半、画面から贅沢色が消え、ドロンの服装もトレンチコートに中折れ帽といった「サムライ」以来のものになる。
アラン・ドロンについて佐藤忠男は「太陽はひとりぼっち」評で「かぎりなくゼロ、という感じの俳優である」と評したし、「世にも怪奇な物語」の一話「ウィリアム・ウィルソン」ではもろに分身役をやっていた。そのドロンがもうひとりのミスター・クラインなる人物に翻弄される話ということ。