prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

11月22日(水)のつぶやき

2017年11月23日 | Weblog

「四畳半神話大系」

2017年11月22日 | アニメ
劇場で「夜は短し恋せよ乙女」を見て面白かったので、TSUTAYAにできていた同じ湯浅政明監督のDVDの棚からこの旧作テレビシリーズを借りて見た。

で、まず「夜は…」と同じキャラクターが出てきたのにびっくり。のんきな話で、原作が同じ人(森見登美彦)と知らなかったのです。
一種のシリーズものと考えていいのだろうか、全部同じではなく一部だぶっているのが実はこのシリーズの内部の構造ともつながっているところ。

非常に奇妙な気分になるのはこのテレビアニメの中で「夜は短し恋せよ乙女」の原作本が紹介されるシーンがあること。アニメ化の前に出版されていたのだろうけれど、何やら因果関係がねじれた、クラインの壺にはまったような感じ。

舞台設定も同じで、見ていて明らかに京都大学周辺だなとあまり京都について知らない人間でもわかるので調べてみたら案の定、原作者は京大の農学部出身。すごくデフォルメしているようで、設定は周到綿密です。

30分枠×全11話なのだが、連続ものとも一話完結ものとも違う独特の構成。
第一話で主人公が大学一回生から二回生にかけて映研で青春をムダにするエピソードが描かれるので、第二話ではその続きになると思いきややはり一回生から二回生にかけてで青春をムダにするエピソードになる。第三話以降も同じ調子で時間がループしそのたびに違う部活その他でキャンパスライフを謳歌しようとしてことごとく惨憺たる結果になるのが繰り返される。

それを仕掛ける半魚人ともぬらりひょんともさまざまに形容される面妖なキャラクターの名前が小津、というのだから人を食っている。

後半に入って、雪隠詰めになった状態で三人の女性のうち誰を選ぶのかというところから始まって三通りの展開を見せる「羅生門」みたいなエピソード群を経て、「私」が平行世界式にえんえんと連なっている(セリフでも暗示しているが明らかに筒井康隆の「平行世界」が元)四畳半を渡り歩く一話まるまる一人のモノローグで通す(だからエンドタイトルで浅沼晋太郎一人しかクレジットされない)大胆な作りのクライマックスを迎え、小津と「私」の立場が逆転するエピローグに至る。

毎回のメインタイトルが実はこの平行世界を渡り歩くクライマックスをすでに暗示していて、最終話だけメインタイトルのデザインがエンドタイトルのアレンジになり、エンドタイトルがいつものメインタイトルになるという具合に、シリーズ全体のデザインがまことに大胆にして緻密。

大胆な画のデフォルメの仕方、色彩の使い方の魅力を挙げていけばきりがない。




11月21日(火)のつぶやき

2017年11月22日 | Weblog

「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」

2017年11月21日 | 映画
べらぼうに長い原作はまだ最初の方しか読んでいないが、大人になった主人公たちが27年前の出来事の再現に引き付けられるように集まっていく、その原点になった過去の出来事でまとめたのが今回の映画化。

子供たちがそれぞれコンプレックスを抱えているのを丁寧に描きこんでいるのが「スタンド・バイ・ミー」ばりで、情感豊かなところも似ている。違うのは女の子も混ざっているところか。
ばらばらになっていると無力なばかりか互いに攻撃し合うようなルーザーズ・クラブの面々がITに対する恐怖という点で一体化するドラマの骨格がしっかりしていて胸が熱くなるような瞬間がいくつもある。

性的虐待を娘にしている父親(なんだかイーストウッド似のStephen Bogaertという役者がやっている)や、ひどく残虐ないじめっ子たちとかいった現実の人間たちが十分に邪悪で恐ろしいのがキング原作らしい。

ピエロのペニーワイズがくわっと口を開けると中にびっしりと歯が何列にもわたって生えているのがおどろおどろしいと共に動物にああいうのは実際に多いのを思わせる(かわいい動物の口の中の写真、どれも夢に出てきそうなレベル)。

あまり関係ないが、この映画の下水道の汚らしさに対して「第三の男」の下水道は実に美的だったなと思い出していた。白黒映像の魔力というか。
(☆☆☆★★★)

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。 公式ホームページ

IT/イット “それ“が見えたら、終わり。|映画情報のぴあ映画生活

映画『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』 - シネマトゥデイ



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11月20日(月)のつぶやき

2017年11月21日 | アニメ

「女神の見えざる手」

2017年11月20日 | 映画
ジェシカ・チャスティンのヒロインは銃規制を推進するロビイングを行うのだから「正義」の側かというと、とてもそうとは言い切れないダーティで人を人とも思わないような手も使うし、私生活でも道徳的にあまりほめられた真似をしない。それを表情を変えずに危なっかしくいつ滑り落ちるかわからない剣が峰を渡っていくのがハードボイルド調で格好よくもスリリング。

それにしても銃規制反対派の資金力の方が圧倒的に上というのがいかにもアメリカ。メディア対策というのがいかにロビイングにといって重要かというのもよくわかる。

ロビイングチームのスタッフのひとりひとりに至るまで多彩な顔を敷き詰めたキャスティング、なんでもないようなディテールに張られた伏線が一気に終盤に立ち上がる脚本が見事。

悪役チームがサム・ウォータストンとジョン・リスゴーという重量級。共に役者自身が名門大学(それぞれイェール大学、ハーバード大学)出身なのを知っていて見ると、いかにもエスタブリッシュメントという感じが強まる。
(☆☆☆★★★)

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映画『女神の見えざる手』 - シネマトゥデイ



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11月19日(日)のつぶやき

2017年11月20日 | Weblog

「予兆 散歩する侵略者 劇場版」

2017年11月19日 | 映画
冒頭から人の動きや反応がちょっとづつ普通とずらされている。夏帆がフレーム外の誰かを追ってフレームから出ていったのを追ってカメラが動き窓際にいる染谷将太を捉えるのだが、普通なら夏帆がその傍らにいそうなものなのだがおらず、改めてフレームの外から入ってくる、といった調子。

この間(ま)と予感の感覚は、垂れ下がった布がわずかな風で揺れたり、どこかから伝わってきた振動で手術用具がカタカタ鳴ったり、窓の外の光が強まったりといったタルコフスキーを思わせる技法で描かれる。
タルコフスキーの後期作品を貫いているカタストロフが近づいている感覚をもう少しとっつきやすい、やや可笑しさを含んだタッチで表した感じ。

誰もいないのに自動ドアが開き、しばらく間を置いてから東出昌大が登場するシーンなど、それだけで人外の者であることがはっきりわかる。そういう日常的な道具立てを使って世界や人物を異化する腕が見もの。

侵略者の先遣隊が人間の「概念」を奪う、というキモになる発想はスピンオフの元になっている「散歩する侵略者」から引き継いでいるのだが、やはりコトバによる発想と展開で前半のセリフに頼らない表現の緊張感に比べると何か隔靴掻痒な感じがする。「感情」を奪うのだったらピンとくるのだが。
(☆☆☆★★)

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映画『予兆 散歩する侵略者 劇場版』 - シネマトゥデイ

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11月18日(土)のつぶやき

2017年11月19日 | Weblog

「つみきのいえ」

2017年11月18日 | 映画
海底油田の基地のように海の上に突き出た住居に一人住む老人が水底に没した家とそこでの家族との思い出にふける、その情感が豊かで見もの。思い出の深さが水の底の深さと見合っているという形で目で見せる。

水の底にあるなんともいえないロマンチックな情緒と、アニメならではのいい意味で美化した表現が結び付いた。

DVDにはナレーション(長澤まさみ)がついた版とない版の両方が収録されているが、どちらがどうとも言いにくい。

実をいうと映画館の半券を提出すると無料になるというTSUTAYAのキャンペーンを利用して借りた。短編で長編一本分と同じレンタル料というのは割高感がある(もちろん本来、内容が良ければ関係ないのだが)。ネット配信など短編の秀作をやっていないものかな。

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映画『つみきのいえ』 - シネマトゥデイ



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11月17日(金)のつぶやき

2017年11月18日 | Weblog

「マイマイ新子と千年の魔法」

2017年11月17日 | 映画
昭和30年代という近いようで遠くなりつつある過去と、千年前という大昔とが少女の空想と具体的な画の中でダブルイメージされる、昔だったらアラン・レネのアートフィルムで使われるような技法が消化されていともわかりやすく駆使されている。

畑の中で直角に曲がっている川がなんでそうなっているのか順々にわからせていく手つき。
麦畑に潜った新子が水の中で泳ぐように抜き手をきるところから水と作物のイメージが自然とだぶってくる。

危ないところにいるガラの悪い連中が本当に危ない感じがする。
どうしても「この世界の片隅に」の監督の旧作という見方になってしまうのだけれど、公開時に見ていたらどう見えただろうと思える。個人的にはそれほど理解できなかったのではないかという気がする。

オセロではないけれど、ひとつ決定的な成功作が出るとばたばたっとそれまでの作品に日が当たる。

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映画『マイマイ新子と千年の魔法』 - シネマトゥデイ



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11月16日(木)のつぶやき

2017年11月17日 | Weblog

「彼女がその名を知らない鳥たち」

2017年11月16日 | 映画
出てくるキャラクターがクズばっか、という噂は本当。
松坂桃李や竹野内豊みたいないい男代表みたいな役者が徹底したクズをやっているのが、逆にクズでも惹かれてしまうというのが説得力がある。

前半は綿密な描写でクズたちの生態を積み重ねておいて後半ミステリ的なひねりを見せるのだが、ミステリ的趣向とするとある意味よくある分ちょっと説得力が欠ける。そのため、ラストがむしろ観念的な感じになった。
ラストの走馬燈のような回想の処理が間延びした感じなの惜しい。

時代設定は現代だと思うのだが、出てくる携帯がガラケーばかりでスマホが見当たらないのはどういうわけだろう。スマホよりお似合いであることは確かだが。

食事のシーンが何度もあるが、気のせいか白い飯を食べているところかないのではないか。たいていはビールを飲んでいるか、うどんやパン。関西が舞台ということもあるのだろうか。
ちゃんと炊飯器が見えるので炊こうと思えば炊けるはずだが、ヒロインはまったく家事をしない表れということか。
セックスシーンで相手によってつけている下着がまるっきり違うのが可笑しい。全体に粘っこい生活描写のディテールが光る。
(☆☆☆★★)

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映画『彼女がその名を知らない鳥たち』 - シネマトゥデイ

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11月15日(水)のつぶやき

2017年11月16日 | Weblog