影武者といっても王の影武者ではなく、重臣の影武者で、しかも負傷した重臣の代わりに領土争いの相手でもある剣客と戦わなくてならず特訓を受けるのだから、何重ものプレッシャーを受ける。
奥方や側室との微妙な三角関係というのも影武者ものの定番だが、ここでは妻役のスン・リーとチャオが実生活の夫婦ということと、監督のチャン・イーモウが女性描写が得意(実生活でもスケベ)なこともあってかなり描き込んである。
チャン・イーモウといったらデビュー作の「紅いコーリャン」以来極彩色がトレードマークみたいな監督だけれど、ここでは主人公が「影」ということもあって思い切り墨絵風のモノトーンで統一し、肌や血の色だけが浮き立つ色彩処理をしている。デジタル処理でないとムリだろう。
ただ本当のモノクロだと無限の色彩を想像できるのだが、なまじ少し色をつけた分、ずうっと続くと単調に感じる。
雨の中、傘をさまざまに応用した奇想の戦いぶりが見もの。
横暴な権力者を否定してはいるのだが、およそカタルシスには乏しい。だいたいイーモウ作品の、特に時代ものはそういうの多い。