晴れ、28度、82%
私の父は、写真を生業としていました。今のように、カメラを持っている人も少なかった頃、家で写真のプリントが出来るなんて思ってもなかった頃のことです。父が逝って45年が経ちます。みんなが簡単に携帯で写真を撮り、すぐにプリントが出来る今の様子を父が見たらなんと思うでしょうか。実家の荷物の整理をしている時に、父が大事な写真に使っていた、インボッサーがでてきました。父の名前を紙に捺すインボッサー。写真を挟み、上からハンドルをおろすと紙に凹凸が出来て父の名前が捺されます。重い重いインボッサーでした。どこかで作ってもらったものでしょう。荷物の整理の時に、そのインボッサーを残したのか、捨ててしまったのか、どうも思い出せません。残してあれば、預けてある家具などと一緒に倉庫にあるはずです。そんなインボッサーに小さい頃から憧れていました。
欧米には、イニシャルを刺繍したり、銀器に彫ったり、食器にペイントするモノグラムがあります。ハンカチに刺繍されたモノグラム、代々使われている食器に書かれたモノグラムは、東洋にはない歴史を感じます。アルファベットを装飾したモノグラムの文字は、どのアルファベットもしゃれて見えます。
私のイニシャルは,Mです。Mをモノグラムにすると、字が動き出すかのように、明るいイメージに変わります。15年ほど前に、香港の文房具屋で見つけたのが、 小さなイニシャルだけのインボッサーです。日本製です。黒い部分がイニシャルのカートリッジになっていて、好きな文字のカートリッジを選ぶようになっています。本体とこのカートリッジは別売でした。
以来、紙ナプキンや洋箋のヘッドにこのインボッサーで私のイニシャルを捺します。見出し写真は、レターヘッドです。 普通の紙ナプキンもご覧の通り。どなたも気付かれませんが、このMのマークが入るだけで、自分だけのものと思います。
このインボッサー、どこのメーカーか分かりません。日本の文房具屋にあると思います。これを買った香港の文房具屋、本体はすでに売り切れたのか見当たりません。残ったカートリッジだけが、埃を被って売られています。