チクチク テクテク 初めて日本に来たパグと30年ぶりに日本に帰ってきた私

大好きな刺繍と大好きなパグ
香港生活を30年で切り上げて、日本に戻りました。
モモさん初めての日本です。

「暮らしを旅する」中村好文

2014年07月14日 | 

曇、28度、79%

 日本の建築家は世界の至る所で活躍中です。新しいルーブル美術館も日本人の二人の建築家、そういえば磯崎新の新しいビルが香港のセントラルにも建ったばかりです。

 世界で活躍する建築家とはひと味違った建築家として、私が好きなのが中村好文です。木工家の三谷龍二の小さな家の設計をしたのが中村好文だと知って以来、折に触れて、出版物も求めて来ました。雑誌などの小さな文章でも切り抜くほど、中村好文の文章はすっと身に沿って来ます。コルビジェのような建築家のことを書く時ですら、まるで、隣のおじさんのことを書いているような気安さです。丸眼鏡の風貌にも現れている人柄のせいでしょうか。

 高校の頃大好きだった詩人で建築家の立原道造、24歳で急逝した立原道三が週末の家にと考えた5坪ほどの家はヒヤシンスハウスと名付けられ、その幾つかの設計図にも見惚れたものです。このヒヤシンスハウスは今ではさいたま市のどこかに建てられているとか。そんな小さな家の流れを汲む中村好文の作る家の感覚は、明かり取りの窓ひとつにも妙を得ています。

 「暮らしを旅する」中村好文の随筆の短編集です。先月の帰国前に作った買って来る本のリストの4冊のうちの1冊です。人がほとんどいない建築関係の本棚の前で、この本を取り上げたとき、なぜか、暖かさが伝わって来ました。パラパラとめくると、どこかで読んだ文章ばかりです。買わずに帰ろうと本棚に戻そうとした時、外表紙の紙に目が行きました。アルファベットが印字されています。デザインよりもその紙の色と手触り、紙の表紙が暖かさを届けてくれます。この外表紙は、中村好文が設計したフレンチレストランのランチョンマットだそうです。触らない色といい、紙の質感が伝わって来ます。もう一度手に取り直して、やはりレジにと向かいました。

 家の設計といっても、そこに置かれる本と生活、そこに置かれる焼き物と生活、そんな機微まで含めた建築家中村好文の世界、本屋で見かけたら手に取ってみてください。立ち読みできるほどの小さな本です。

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