いつも同じように見える山も、川も、海も、
昔の人が見ていた姿とは違うのかもしれない、とふと気がつくことがあります。
川の流れが変わり、海岸線が変わったり、山の形が変わったり、
意外なほど、どんどん景観は変わっているようです。
土地の沈降、地震や火山の爆発、降雨(洪水)などの様々な自然現象に加え、
人とのかかわりの中で景観は変わっていきます。
この本は、昔の地名、古地図、記紀や万葉集などの古文書を基に、
地層、岩石や土や砂、住居跡などを丹念に調べ、
現在の山の形(標高)や河川の様子、山の植生などと比較研究して、
その場所がどのように変遷してきたかを考え、
生活の場、生産の場、消費の場、などの章にわけて
過去の姿を推理しています。
上の図は(京都府、山城盆地)木津川が何度も氾濫を繰り返した平地で田の位置に比べ畑は高くなっていて、
住居地はさらに高く土を積み上げています。しかも何度もそれを繰り返した跡があり、
今では居住地はまるで島のようになっているそうです。
かつては屋根裏に舟が吊るしてあったそうです。
(今は、河川改修が進み、氾濫の恐れはなくなっているそうです。)
また別の地域(大井川扇状地)では、家の建つ台地が三角形になっていて、
その鋭角の部分が川の氾濫の際の上手になっていて、
そこに、何本も大木が植えられているそうです。
上の図は日本一雨が多いと言われる大台ケ原から流れ出る川が海に注ぐ所、
海岸線の変遷の激しいところだそうです。
図だけではよく分かりませんが、
かつて大きく蛇行していた川が、今は直線的な流れになっていることが分かります。
『 地形から見た歴史 ー古代景観を復元するー 』
日下雅義 著
講談社学術文庫 2014年第8冊(2012年第1冊)
(表紙は6~7世紀ころの摂津・河内・和泉の景観)