夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

本を焼くということ(その1)

2004年07月05日 | 映画(番外編:映画と読み物)
ロードショー中の『デイ・アフター・トゥモロー』は
地球の温暖化により氷河期が訪れるというもの。
『インデペンデンス・デイ』(1996)と同監督の作品で、
内容はツッコミどころ満載のB級映画だと思うんですが、
そうとは言わせない役者陣を並べて惜しみなくお金を使い、
A級娯楽映画にしちゃうのがこの監督のスゴイところ。

今回も、メグ・ライアンと別れてから
おいしい役がまわってくるようになったデニス・クエイドを主役(古気象学者ジャック)に据え、
その息子役サムには、『遠い空の向こうに』(1999)や『ドニー・ダーコ』(2001)など、
メジャー級とまではいかないまでも
粒ぞろいの作品に出演しているジェイク・ギレンホール。
彼はこんな大作に出ても熱くなりすぎない演技が○。

また、スコットランドの研究者ラプソンに
『ロード・オブ・ザ・リング』のビルボ役の名優、イアン・ホルム。
北半球に大寒波が押し寄せ、ヨーロッパがまず凍り始めたとき、
研究所内で死が目前であることを知ったラプソンとその部下2名が
12年物のスコッチを手に笑顔で乾杯する姿は涙を誘います。

この娯楽映画のなかで、特に興味を惹かれたのは
本を焼くということ。

ニューヨークに滞在中のサムとその友人たちは、
車も飲み込む大雨に襲われ、公立図書館へと逃げ込みます。
雨は次第に雪へと変わり、建物内に避難していた市民たちは
今のあいだにできるだけ南へ逃げようと図書館を飛び出します。

父親から「そこを絶対に出るな。出れば凍死する。必ず助けにいくから」
と言われていたサムはみんなを制止しますが、
サムの友人とごく一部の人しか彼の言うことを聞きません。

図書館に残った人びとは暖をとるために本を燃やすことにします。
本を焼くという行為は『華氏451』(1966)や『リベリオン 反逆者』(2002) などで取り上げられており、
この作品にもその影響はあるでしょう。

ニーチェを燃やそうとする女性に「すばらしい哲学者なのに」と怒る男性。
「ニーチェなんて妹に恋した変人よ」。
税法の本を嬉々として燃やしたがるホームレス。
無神論者だけど、この聖書は世界で初めて印刷された本だからどうしても燃やしたくない、
本こそが人類最大の発明と語る図書館員。
こんな会話をとても楽しく思いました。

本を焼かなければいけないとしたら、どれから?
『華氏451』と『リベリオン 反逆者』は次回に。

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