夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『クジラの島の少女』

2004年07月01日 | 映画(か行)
『クジラの島の少女』(原題:The Whale Rider)
監督:ニキ・カーロ
出演:ケイシャ・キャッスル・ヒューズ,ラウィリ・パラテーン,ヴィッキー・ホートン他

昨年秋の公開当時、
‘ニュージーランド版風の谷のナウシカ’と紹介された作品。

ニュージーランドの浜辺の村に暮らすマオリ族。
その昔、勇者パイケアが新天地を求め、ハワイキを出発。
大航海の末、パイケアはこの村に鯨に乗ってやってきたと言い伝えられている。
そのパイケアを祖先とするマオリ族は、現在も後継者を男性に限っている。

族長であるコロは、結婚した長男ポロランギが息子を授かることを心待ちにしていた。
しかし、双子を身ごもっていた長男の妻は出産と同時にこの世を去る。
そして、双子の男の子も死亡。
残されたのは望まれずに生まれた娘ひとり。

世継ぎの夢を絶たれたコロは落胆し、誕生した孫娘には目もくれようとしない。
そんなコロの非情さにやりきれなくなったポロランギは
娘に勇者の名「パイケア」と名付けて村を出てゆく。

パイケアは祖父コロと祖母フラワーズのもとで育つ。
頑なだったコロの心も、かわいいパイケアにいつしか解け、
孫娘への愛情は示すようになる。
だが、女であるパイケアを後継者にはできない。
一方、フラワーズは伝統なんてクソくらえ。
パイケアを温かい目で見守りつづける。

コロは新たな後継者を探すため、
村の少年たちを集めて伝統的な歌や戦闘技術の訓練を始める。
後継者になるべき少年には何らかのお告げがあるはず。
集めた少年のなかにそれを見いだそうと懸命になるコロ。

パイケアも訓練の輪に加わりたいと願うが、
女であるがゆえに祖父から追い出される。
あきらめきれないパイケアは、近所に住む叔父のもとを訪れ、
戦闘技術の指導を頼むのだった。

原題は“Whale Rider”(=鯨乗り)。
同じニュージーランドでも『ロード・オブ・ザ・リング』とはまたちがう世界。
監督をはじめ、役者のほとんどが本当のマオリ人です。
マオリ人の暮らしも興味深く、
人を威嚇するために舌を出す仕草や、鯨を介抱する様子など。

伝統に重きを置く祖父のもと、女に生まれたことを悩み、
スカートをはきながらも男顔負けの振る舞いに努めるパイケア。
オチは「え?そんなんあり?」と思わないこともないけれど、
清々しく、心が洗われます。

宮内庁のみなさん、この映画の鑑賞会をされることを
ぜひともお勧めいたします。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする