夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

本を焼くということ(その2)

2004年07月07日 | 映画(番外編:映画と読み物)
『華氏451』(1966)は、レイ・ブラッドベリによって
1953年に書かれたSF小説『華氏451度』の映画化。
フランスの巨匠フランソワ・トリュフォー監督の作品です。
タイトルは書物が自然発火する温度を指しています。

舞台は近未来。
人間に思想を持たせると危険という考えから、
活字はすべて禁止された社会。
普通、火を消すのが仕事であるはずの消防士は、
この作品のなかでは焚書士。
本を隠し持つ家庭を見つけては一斉に火をつけて灰にします。

主人公のモンターグは優秀な焚書士。
しかし、ある女性と知り合ってから、本に興味を持ちはじめます。

本を読んでしまった人間に治療をほどこす、
つまりは本から得た知識を忘れさせると、
理性を失って食欲と性欲が増大するのがおもしろいですね。

スポーツさえさせておけばいらんことは考えなくなるという台詞には反対。
頭を使わなきゃ、スポーツはできないでしょ。

カンヌ映画祭でパルムドールを受賞し、
つい先日全米で公開されて物議を醸しているマイケル・ムーア監督の『華氏911』ですが、
ブラッドベリから「タイトルを盗まれた」と訴えられそうになりました。
ムーアは「『華氏451度』に敬意を表した」とコメントしてます。

この『華氏451』を下敷きにしたと思われる作品が『リベリオン 反逆者』(2002)。
感情を持つことが諸悪の根元と信じられ、感情を抑制する薬が開発されます。
人びとは、毎日、この薬の投与を義務づけられており、
本はもちろん、絵を見ること、音楽を聴くこと、
感情に作用するものはすべて禁止。
見つかれば燃やされ、所持者は処刑されます。

こちらはビデオのジャケットからしてめっちゃB級。
レンタル店で見かけたとき、郷ひろみかと思いました。
「ヒロミ・ゴーです」という声が聞こえてきそうなジャケットで
めちゃ笑けます。

邦題もB級にしている要因かと思いますが、原題は“EQUILIBRIUM”。
「均衡」の意で、作品中ではこの社会のセンターとなっている建物の名前。

この2作品と、本を焼かなきゃ生き延びられない局面にある
『デイ・アフター・トゥモロー』、どちらも楽しめます。

1933年、ナチスが「反ナチス的である」という名目で焚書をおこないました。
そのとき焼かれた書物のなかにハイネの詩集も。
ハイネは「本を焼くものは、やがて自分自身も焼かれる」と語っています。

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