夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

最近、涙で目が潤んだ本(その2)

2012年01月13日 | 映画(番外編:映画と読み物)
もう1冊は、辻村深月の『ぼくのメジャースプーン』。

前述の『空飛ぶタイヤ』の池井戸潤が1963年生まれなのに対し、
辻村深月は1980年生まれ。
なんとなく私より5歳以上若い著者の作品は避ける傾向にありましたが、
『重力ピエロ』でハマって読みあさった伊坂幸太郎が1971年生まれ、
『片眼の猿』と『ソロモンの犬』が好きだった道尾秀介が1975年生まれ、
『インシテミル』などの米澤穂信が1978年生まれ、
それになんと言っても森見登美彦が1979年生まれということもあり、
1980年生まれの作家にも挑戦してみることに。

小学4年生の「ぼく」は、同級生の「ふみちゃん」のことが好き。
ある日、みんなで飼っていたうさぎが惨殺される。
誰よりもうさぎを可愛がっていたふみちゃんが第一発見者。
ふみちゃんはショックのあまり、心を閉ざしてしまう。

ぼくは不思議な力の持ち主。
「条件ゲーム提示能力」と呼ばれるその力は、声をかける相手に対して、
「Aという条件をクリアしなければBという結果が起こる」と提示するもの。

ぼくは犯人に復讐するため、ぼくと同じ力を持つ「先生」のところへ通い、
この力の使い方を学ぶように。犯人と対面したぼくは……。

読み始めたときの感想は、「やっぱり若すぎる著者の作風は合わないかも~」。
ふみちゃんがどうにも優等生すぎて、鼻につくことしきり。
ところが、そんなふみちゃんが口を利けなってからが切なすぎます。
ぼくが意識不明に陥ってから、一日も欠かすことなく病院まで足を運び、
ぼくのそばに座るふみちゃんの姿にウウッと思わず涙。

さて、泣いた話はこれぐらいにするとして。

この世のなかでもっとも凄絶な復讐は何かを考える場面で、
先生が復讐をテーマにした映画の話をします。
ある男に酷い目に遭わされた主人公が、
自分同様にその男を憎悪する被害者を探しだし、一堂に会して順番に復讐。
最後の人に順番が回るまで殺さないように気をつけて痛めつけるという映画。

先生はこの映画の話をぼくにしたあと、
実はそんな映画があることも自分が観たということも嘘だと言いますが、
まさに『親切なクムジャさん』(2005)がそうですよね。

『飯と乙女』(2010)のDVDに特典として収録されている短編『Rabbit for Dinner』では、
男性から食べたいものを聞かれた女性が「兎料理」と答えます。
『ぼくのメジャースプーン』でやはり先生が教えてくれる、兎と猿と狐の話も登場。

復讐に関係なく、「条件ゲーム」を考えるのもなかなか楽し。
たとえば、「いま好きだと言わなければ、その人と一生会えなくなる」とか。
ぼくからそう声をかけられた相手は、
一生会えなくなるのが嫌ならば、何が何でも好きだと言おうとします。
だけど、声をかけられた相手が無意識のうちに条件と結果を天秤にかけ、
一生会えなくなるとしても、好きだとは言いたくないと判断する場合もあるわけで。
同じ相手に使えるのは一度のみ。
そんな力を持っているとしたら、どんな相手になんと声をかけますか。

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