夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『トーキョードリフター』

2012年01月24日 | 映画(た行)
『トーキョードリフター』
監督:松江哲明
出演:前野健太

数年ぶりに、大阪は十三の映画館、第七藝術劇場へ。
『あんにょん由美香』(2009)がめちゃめちゃよかった松江哲明監督。
大阪ではここのみ、しかも2週間しか上映していませんから焦って。

同監督の『ライブテープ』(2009)はまだ観ていないのですが、
ミュージシャンの前野健太がギターを弾き語りながら、
2009年1月1日に吉祥寺を歩く様子を収めた作品でした。
本作は、同じく前野健太が2011年5月27日の夜から翌28日の朝まで、
新宿や渋谷をギター片手に歩く姿を収めています。

2009年のその日と2011年のこの日で決定的にちがっているのは、街の明るさ。
東日本大震災の後、節電のためにネオンが消えた街で弾き語ります。

2011年5月27日、19:35。
小雨のぱらつく交差点で歌うシーンからスタート。
高い位置から彼をとらえた映像は、時折レンズが雨で曇ります。
ビルの谷間、まだ店内に明かりのともる美容室の前、文化住宅の階段、
踏切、閉店後で真っ暗なH&Mや、やや照明暗めのコンビニの前などなど。
これらの場所をギターを背負ってバイクで行き来。
最後は河川敷にて、2011年5月28日、5:34。

通行人は誰も彼を気にすることなく、それが少しせつない。
けれど、そんなことは意に介さずに歌い続ける姿がたくましい。
私はちゃんと聴くからねと、最初は歌詞も聞き逃さんとこうと必死。

しかし、30分を過ぎた頃からかなりつらくなってきて。
イケメンのミュージシャンであれば、見ているだけでも退屈しなかったでしょうけれど、
なにしろこの前野さん、ちんちくりんの井上陽水みたいな感じ。ごめんなしゃい。
好きなタイプの歌とも言いがたく、集中力ダダ下がり。

日ごろ眠っていると、朝はあっちゅうまに来るのに、
こうしてず~っと歌っていると、長いですねぇ、夜って。
72分の中編ですが、空が白むまでを異様に長く感じました。
前野さんが河原にピックを投げたときには、
やっと終わりや!とひそかに喜んでしまった私をお許しください。

と言いつつも、ラストの疾走シーンに妙な爽やかさを感じました。
観終わってからはトーキョードリフター♪と知らぬ間に口ずさんでいるし。

飲み屋らしき看板は「春夏冬」。なぜに秋を抜いたのか気になります。
それと、「オッサンしか友だちのいないふりをするやさしい猫」。
前野さんの歌詞の一部。こんな猫、いそうだなとニヤリ。

〈追記〉アップした直後に「春夏冬」について教えてくださった方が!
    “「秋ない」ってコトで、「あきない」→「商い」→「商い中」
    →「営業中」ってコト”だそうで。ほぉぉぉ、なるほど。
    これってもしかしたら常識で、みなさんご存じでした?(^^;
    やさしい猫さん、ありがとうございま~す。  

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