夜な夜なシネマ

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『アルバート氏の人生』

2013年01月29日 | 映画(あ行)
『アルバート氏の人生』(原題:Albert Nobbs)
監督:ロドリゴ・ガルシア
出演:グレン・クローズ,ミア・ワシコウスカ,アーロン・ジョンソン,
   ジャネット・マクティア,ブレンダン・グリーソン,ポーリーン・コリンズ他

大阪ステーションシティシネマにて。

『危険な情事』(1987)から四半世紀、ストーカー女を演じたグレン・クローズも65歳。
本作は彼女自身が脚本・製作・主演を務めるアイルランド作品です。
監督はコロンビア出身でメキシコ育ち、俳優陣はアイルランド出身者もいれば、
アメリカにオーストラリアにイギリスと多国籍。
ちなみに主題歌を歌うシネイド・オコナーはアイルランド出身で、
前述の『テッド』ではイカレた誘拐犯のジョヴァンニ・リビーシが
「老けたシネイド・オコナーみたい」なことをテッドから言われていました。

19世紀、アイルランドのダブリン。
老舗のモリソンズホテルに住み込みのウェイターとして長年勤めるアルバートは、
真面目な働きぶりと寡黙ながらも細やかな気遣いで、常連客からの信頼も厚い。
こつこつ貯めたチップを床下に忍ばせ、いずれ自分のタバコ店を持つのが夢。

そんなアルバートは私生活では徹底して人づきあいを避けている。
実はアルバートは女性であり、男を装うのは女ひとりで生きていくための手段。
それがばれないように他人と関わりを持たないように生きてきたのだ。

ところがある日、ホテルの女主人がアルバートを呼んで言うには、
壁を塗り替えるために雇ったペンキ職人のヒューバートを
アルバートの部屋に一晩泊めてやるようにとのこと。
アルバートはなんとか理由をつけて断ろうとするが無理。
その晩のうちにヒューバートに女であることを知られてしまう。

どうか女主人に黙っていてほしいと懇願するアルバートに、
大男の風貌のヒューバートは、自分も女であることを打ち明けて笑う。
ヒューバートと話すうち、新しい人生が見えてきたように思うアルバートは、
将来自分の店を持つときにはメイドのヘレンを引き抜けばいいと推され、すっかりその気になる。

一方、近隣のホテルでドアマンを務めていた若者ジョーは、客の機嫌を損ねて即刻クビに。
ちょうどボイラー技士を探していたモリソンズホテルに潜り込み、まんまと仕事を手に入れる。
色男でその実ろくでなしのジョーにヘレンはぞっこんの様子で……。

オフ・ブロードウェイの舞台だったという本作。
もとの話を知らないものですから、「良い話」を期待して観に行きました。
けれども愚直なアルバートの人生はあまりに悲しいもの。
ジョーの差し金でヘレンに良いようにあしらわれ、
その人生の終わりはあっけなく、哀れという以外に言葉が出ないほど。
幸せだったかどうかは人が決めるものではないですが、
幸せだったとは到底思えず、いい夢を見て逝けたことを祈るばかり。

ヒューバートを演じるのは『Songcatcher 歌追い人』(2000)の音楽学者役だったジャネット・マクティア。
大柄で男っぽくはありますが、男として登場した瞬間から違和感があり、
実は女だと明かされても驚きはありません。
ジョー役は『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』(2009)のアーロン・ジョンソンで、
そう、23歳も年上の監督と結婚した彼でした。

見応えはじゅうぶんでしたが、やるせなさでいっぱいになり、
こんなはずじゃなかったのに~と悲しくなりました。(;_;)

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