夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『横道世之介』

2013年03月02日 | 映画(や行)
『横道世之介』
監督:沖田修一
出演:高良健吾,吉高由里子,池松壮亮,伊藤歩,綾野剛,柄本佑,
   堀内敬子,江口のりこ,國村隼,きたろう,余貴美子他

TOHOシネマズ西宮で3本ハシゴの3本目
前述の『ゼロ・ダーク・サーティ』は158分とわかって観に行きましたが、
本作は後の予定に合わせて何も考えずに予約、
座席に着いてから、「あれ?終映時刻、変じゃない?なんで?」とふと思い。
大長編であることに気づかずに着席したのは『カラスの親指』(2012)以来。

『南極料理人』(2009)と『キツツキと雨』(2011)の監督が
『悪人』(2010)の原作者、吉田修一の同名小説を映画化。
終始ほんわかした雰囲気をイメージしていたら、やられてしまい。
原作者が原作者なので、和むだけの話ではなかろうという想像が足りませんでした。
そういう裏があるとは思いもよらず、ちょっぴり切ない。
ご存じない方はご存じないままで観に行かれることを推奨します。

新宿駅横の斉藤由貴のデカい看板が目を引く、思いっきり1980年代。

長崎の港町で生まれ育った横道世之介、18歳。
早稲田大学を受験するも失敗、合格した法政大学(原作者の母校)へ進学するために上京。
世間知らずなところはあるが、明るく素直でお人好し。

まず世之介が親しくなったのは、入学式で隣席だった同じ経営学部の倉持一平。
その後、教室で言葉を交わした阿久津唯と学内をうろうろしていると、
サンバサークルに捕まっている一平とバッタリ。
なんとなく3人ともサンバサークルに入ることに。

あるとき、謎めいた年上の女性、片瀬千春と出会い、たちまち惹かれる。
千春への想いをどうしても誰かに聞いてほしくなった世之介は、
たまたま教室に居合わせた初対面の加藤雄介と無理やり友だちになる。

シュッとした顔立ちでオシャレな雄介は見るからにモテそう。
女子学生から友だちを誘って一緒に会おうと声をかけられたらしく、
世之介はダブルデートだと大騒ぎ。

当日、女子学生の戸井睦美とその親友、与謝野祥子がやってくる。
入ろうとした店はほぼ満席で、2人ずつでなければ座れない。
雄介狙いの睦美は当然のことながら雄介と席に着き、世之介は祥子と。
ところが祥子はとんでもないお嬢様。そもそも待ち合わせ場所に運転手付きの車で来たぐらい。
そんなお嬢様を目の前にしても自然体の世之介に祥子はいちいち大笑い。
こうして世之介と祥子はつきあっているのかどうかよくわからないまま、
ときおり一緒に過ごすようになり……。

ヒュー・ジャックマン同様、できれば男前の高良健吾が見たいですが、
変な髪型の純朴な世之介を演じる彼は、チンピラ役よりいいかも。
お嬢様言葉が可笑しい祥子役の吉高由里子もかわいい。
世之介の両親役のきたろうと余貴美子も大きな愛情で彼を見守っています。
また、祥子の両親役の國村隼と堀内敬子もホントにいい味。
世之介と同じアパートに住む江口のりこも相変わらず外しません。

1980年代とそれから20年近く経った時代と。
老けメイクなしで同じ俳優が演じているため、
時代が異なることに最初だけ気づくのに少し時間がかかりましたが、大丈夫。
1980年代に世之介と過ごした人たちが、世之介を思い出して目を細めます。
自分のことをいつかどこかで思い出してもらうとき、
こんなふうにみんなが笑顔になってくれたらいいですね。

ラストの桜舞う階段のシーンは、相米慎二監督の『ラブホテル』(1985)へのオマージュでしょうか。
はらはらと散る花びらの下はいつの時代も絵になります。

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