夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『フライト』

2013年03月09日 | 映画(は行)
『フライト』(原題:Flight)
監督:ロバート・ゼメキス
出演:デンゼル・ワシントン,ドン・チードル,ケリー・ライリー,
   ジョン・グッドマン,ブルース・グリーンウッド他

TOHOシネマズ西宮にて4本ハシゴの2本目。

予告編から飛行機事故の話がメインと想像していました。
飲酒して操縦席に着いたパイロットの是非を問うているのかと。
もちろんそれもありましょうが、それだけではありませんでした。

アルコールなしでは生きていけないウィップ。
しかし、自分がアルコール依存症だとは決して認めようとしない。
その日の朝も、客室乗務員のカテリーナとベッドを共にしたあと、
しこたま酒を飲むと、頭をすっきりさせるためにコカイン吸引。
何食わぬ顔をしてフロリダ州オーランド発アトランタ行きの旅客機の操縦席に着く。

離陸直後に乱気流に遭遇するが、ウィップは強引とも思える見事な操縦術を披露。
客席からは拍手喝采がわき起こるほど。
初めて彼と組んだ副操縦士のケンはとまどうが、どうやらウィップの腕は確からしい。

客や乗務員の目を盗んで、搭乗してからも飲酒していたウィップは、
その後の操縦をケンに任せて爆睡。
ところが、まもなく到着という頃、機体は突如制御不能に陥って急降下を始める。
目覚めたウィップはケンやベテラン乗務員のマーガレットに的確な指示を出し、
背面飛行ののちに人家を避けて野原に不時着させることに成功する。

乗務員2名、一般客4名が亡くなったものの、
おそらくウィップでなければ102名全員が死亡していただろうと推測され、
奇跡の着陸として称賛を浴び、彼は一夜にして国民的英雄となる。

ところが、彼の血液からアルコールと薬物が検出され、事態は急転。
まだ公にはなっていないが、事故調査委員会が過失致死罪の適用を検討。
それを阻止するため、航空組合は敏腕弁護士のヒューを雇うのだが……。

機体が操縦不能に陥ってから不時着するまでのシーンはド迫力。
激しく揺れて混乱する客席では、乗務員すら不安を隠せず、
操縦席はハイテンションのウィップが支配。緊迫感に満ち満ちています。

これが相当な見せ場であることはまちがいありませんが、
その後はむしろ、傷ついてアルコールやドラッグに走ってしまった人間が、
どう生きていくのか、何を大事にすべきなのか、
それを問いながら話を進めることに主眼が置かれています。

一旦嘘をつけば、嘘の上塗りを重ねなければならない。
不遜な態度を取りつづけたウィップが嘘を精算したとき、尊厳を取り戻します。
そこでも世間が拍手するかといえば、そんなに甘くはないわけで、
けれども息子のまなざしが、ちゃんと父親を見る目に戻るのです。

受け入れる心、変わる勇気。

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