夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『草原の椅子』

2013年03月04日 | 映画(さ行)
『草原の椅子』
監督:成島出
出演:佐藤浩市,西村雅彦,吉瀬美智子,小池栄子,AKIRA,黒木華,
   貞光奏風,中村靖日,若村麻由美,草村礼子,井川比佐志他

前売り券を買ってあったので、割引のある日に行くのはモッタイナイ。
そう思っていたら、何の割引もない日に急にダンナが飲み会に。
チャンスとばかりに帰り道途中のシネコンへ寄ると他に客なし、貸切状態。
『つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語』に続き、同月に2度も貸切状態とは。
またもや脚を投げ出してごめんなさい。

学生の頃に読んだ『青が散る』が懐かしい、宮本輝による原作の映画化。
成島出監督の作品は非常に平均点が高く、
ミニシアター系作品と商業的娯楽(に徹した)作品の微妙なライン上に位置して、
映画をよく観る人もたまにしか観ない人も、
それなりに(いや、じゅうぶん)満足させてくれる監督だなぁといつも感心します。

カメラメーカーに勤務する営業局次長の遠間(とおま)、50歳。
妻の不倫をきっかけに離婚、大学にかよう娘の弥生と二人暮らし。
近頃、弥生が電話をかける相手が既婚男性のような気がして仕方がない。
けれども年頃の娘にどう言い聞かせればいいのかわからず悶々とする日々。

ある晩、取引先のカメラ店の社長、富樫(とがし)から、突然助けを求める電話が。
路上で困り果てた姿の富樫は、浮気相手の女性とトラブルがあった模様。
遠間が駆けつけたおかげで命拾いした富樫は、お礼に一杯ごちそうしたいと言う。
その席でいきなり富樫から「親友になってくれ」と言われて面食らう遠間だったが、
以来、お互い呼び捨ての敬語なし、仕事抜きのつきあいが始まる。

また、遠間は偶然見かけた陶器店の女主人、貴志子に一目惚れ。
高価な陶器にビビリつつも、貴志子に会いたくて店にかようように。

そんな折り、電話相手と思われる中年男性と一緒にいる弥生を発見。
やがて弥生は喜多川と名乗るその男性と、4歳の圭輔を伴って帰宅。
喜多川は、ただ圭輔の母親から圭輔を押しつけられただけの善意の人らしい。

母親から虐待を受けていた圭輔はすっかり心を閉ざしている。
弥生はバイト先で喜多川と知り合い、圭輔の面倒を見始めたと言う。
喜多川が家を空ける間、圭輔を預かることになり……。

遠間役のこの佐藤浩市はとてもカワイイ。
吉瀬美智子演じる貴志子から買った10万円のお皿のセットを眺めて、
えらい買い物をしちゃったなぁと思いながら、
トンカツを一切れのせて、ちょぼちょぼとソースをかける姿にニヤリ。

富樫役の西村雅彦の関西弁は上手いのかどうかビミョーですが、
とにかく勢いがあるせいか、違和感を抱かせません。
遠間と富樫と貴志子の3人で飲んでいるとき、
貴志子が席を外した隙の2人の掛け合いには、声を上げて笑いました。
「遠くから見ているだけでいいんだ」、「中学生じゃあるまいし」。

喜多川役の中村靖日とイカレた母親役の小池栄子も見どころ。
中村靖日が登場した瞬間に『運命じゃない人』(2004)だから、
悪い人ではないはずと予感させましたが、変な理屈をこねまわすズレた人。
小池栄子は、「お米をとぎます……」がジャック・ニコルソンばりに怖かった
『真夜中の弥次さん喜多さん』(2005)を思い出しました。
『接吻』(2006)の異常さも恐ろしかったし、ホントに上手い。

もちろん圭輔役の貞光奏風くんもいい具合に泣かせてくれます。
成島監督のこういうところも巧みで、お涙頂戴に走りすぎない絶妙のさじ加減。

どう生きればよかったのか。
「駄目だったときの過去の自分も全部含めて自分が好きなの」、
そんな感じの台詞が『世界にひとつのプレイブック』にありました。
本作もそれと同様、自分を好きでいろと言ってくれているかのよう。
「どがいに理屈が通っていても、人情のかけらもないものは正義じゃない」。
この台詞も心に沁みます。

ただひとつ、瞳の中に星を見るおじいさんの手を引いていた子役、
あんた、ニヤケすぎやっちゅうの。(^o^;

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