『渇き。』
監督:中島哲也
出演:役所広司,小松菜奈,妻夫木聡,清水尋也,二階堂ふみ,橋本愛,森川葵,
高杉真宙,國村隼,黒沢あすか,青木崇高,オダギリジョー,中谷美紀他
頭にお酒が残る日曜日に梅田で3本ハシゴ。
今回は3本目に観た本作から逆順にUPします。TOHOシネマズ梅田にて。
原作は、深町秋生の『果てしなき渇き』。
私にとっての鬼門、『このミス』大賞受賞作です。
宝島社から文庫が2種類出ていて、後出の新装版は上下巻に分かれています。
上下巻に分けずとも500頁ちょいなんだから1冊でいいでしょと、
2007年に出版された前出のほうをAmazonマーケットプレイスでわざわざ購入。
先々週読みはじめたら、これがものすごく嫌な話。
冒頭の殺人の様子からして想像すると顔を歪めてしまうほど。
それでも続きが気になって読んでしまうという「困った本」にはちがいないのですが、
同様に「嫌な話なのに読んでしまう困った本」としては圧倒的な面白さだった、
貴志祐介の『天使の囀り』なんかと比べると、なんというのか、品がない。
これを中島哲也監督が映画化するとどうなるのか楽しみでした。
元刑事の藤島昭和(役所広司)。
妻の桐子(黒沢あすか)の不倫現場に乗り込み、相手をぼこぼこにしたせいで、
形式的には依願退職ながら警察をクビになり、警備会社に再就職。
ある日、担当地区のコンビニで3人が惨殺される事件が起こり、
駆けつけた藤島が第一発見者となる。
鬱陶しい事情聴取につきあわされたあと、桐子から電話が入る。
桐子と暮らす娘の加奈子(小松菜奈)が失踪したらしい。
成績優秀で容姿端麗、高校のカリスマ的存在だった加奈子はどこに消えたのか。
桐子が警察に連絡せず、顔も見たくないはずの自分を頼る理由がわからない。
とりあえず桐子の住む部屋を訪ねてみると、
加奈子の鞄からは覚醒剤常用者としか思えないものがごろごろ出てくる。
警察には連絡できない。藤島は自力で加奈子を見つけだす決意をする。
友人たち(橋本愛&森川葵)や中学の担任だった東(中谷美紀)、
そして加奈子がかかっていた医者(國村隼)などに会いに行き、話を聞くうち、
加奈子の意外な一面が明らかになってゆくのだが……。
ほぼ絶え間なく流れる音楽とポップな色使いが映像と合わず、気狂い感増大。
原作で想像したくなかったエグい場面はしっかり描写されていて直視できず。
お酒の残る頭にもガンガン入ってきて面白いことは面白い。
だけど、心に残るものは何もありません。
思いっきりネタバレですが、原作では酔っぱらった藤島が加奈子を強姦していました。
藤島本人はそれを覚えておらず、加奈子は父親の藤島を憎み、
その事実から逃げた母親をも憎みます。
けれど憎しみをあらわにすることはなく、両親を無視することで抵抗します。
……というような、加奈子の行動の理由付けが原作にはあったのですが、
映画では父親に殺されかけても思わせぶりな態度を取るイカレた娘に見えちゃいます。
妻夫木聡演じる藤島の元部下も、原作ではヘラヘラした嫌な奴ではありませんでした。
オダギリジョー演じる警察官にいたっては、ただの殺人好きに。
原作だと、病弱な子どもを抱えてやむを得ず闇の仕事を引き受けています。
それで殺人に目覚めたという一文はありましたが、
妻子への愛情はしっかり感じられる原作だったので、映画には「ひえ~っ」。
もっとネタバレ。
犯人は中学の担任で、小学生の自分の娘が加奈子に売春させられていたと知ったから。
担任が加奈子に手をかけるシーンでは、
加奈子が「潮時かな」(「引き際かな」だったかも?)とつぶやきます。
自分が殺されることを知っているかのような、
それでもいいと思っているかのようなつぶやきが、映画では無し。
感情を持たない人間ばかり集めたよそおいに愕然。
ありゃ、原作は全然好きじゃないと思っていたのに、
こうして書いてみると、意外に良い原作だった?
いやいや、やはり好きじゃない原作は、好きな映画にはならないということか。
観たことは忘れない作品ではあるけれど、
同監督の作品としては、心を捉える部分が少なくて、
痛いシーンのみが焼きつけられてしまいました。
監督:中島哲也
出演:役所広司,小松菜奈,妻夫木聡,清水尋也,二階堂ふみ,橋本愛,森川葵,
高杉真宙,國村隼,黒沢あすか,青木崇高,オダギリジョー,中谷美紀他
頭にお酒が残る日曜日に梅田で3本ハシゴ。
今回は3本目に観た本作から逆順にUPします。TOHOシネマズ梅田にて。
原作は、深町秋生の『果てしなき渇き』。
私にとっての鬼門、『このミス』大賞受賞作です。
宝島社から文庫が2種類出ていて、後出の新装版は上下巻に分かれています。
上下巻に分けずとも500頁ちょいなんだから1冊でいいでしょと、
2007年に出版された前出のほうをAmazonマーケットプレイスでわざわざ購入。
先々週読みはじめたら、これがものすごく嫌な話。
冒頭の殺人の様子からして想像すると顔を歪めてしまうほど。
それでも続きが気になって読んでしまうという「困った本」にはちがいないのですが、
同様に「嫌な話なのに読んでしまう困った本」としては圧倒的な面白さだった、
貴志祐介の『天使の囀り』なんかと比べると、なんというのか、品がない。
これを中島哲也監督が映画化するとどうなるのか楽しみでした。
元刑事の藤島昭和(役所広司)。
妻の桐子(黒沢あすか)の不倫現場に乗り込み、相手をぼこぼこにしたせいで、
形式的には依願退職ながら警察をクビになり、警備会社に再就職。
ある日、担当地区のコンビニで3人が惨殺される事件が起こり、
駆けつけた藤島が第一発見者となる。
鬱陶しい事情聴取につきあわされたあと、桐子から電話が入る。
桐子と暮らす娘の加奈子(小松菜奈)が失踪したらしい。
成績優秀で容姿端麗、高校のカリスマ的存在だった加奈子はどこに消えたのか。
桐子が警察に連絡せず、顔も見たくないはずの自分を頼る理由がわからない。
とりあえず桐子の住む部屋を訪ねてみると、
加奈子の鞄からは覚醒剤常用者としか思えないものがごろごろ出てくる。
警察には連絡できない。藤島は自力で加奈子を見つけだす決意をする。
友人たち(橋本愛&森川葵)や中学の担任だった東(中谷美紀)、
そして加奈子がかかっていた医者(國村隼)などに会いに行き、話を聞くうち、
加奈子の意外な一面が明らかになってゆくのだが……。
ほぼ絶え間なく流れる音楽とポップな色使いが映像と合わず、気狂い感増大。
原作で想像したくなかったエグい場面はしっかり描写されていて直視できず。
お酒の残る頭にもガンガン入ってきて面白いことは面白い。
だけど、心に残るものは何もありません。
思いっきりネタバレですが、原作では酔っぱらった藤島が加奈子を強姦していました。
藤島本人はそれを覚えておらず、加奈子は父親の藤島を憎み、
その事実から逃げた母親をも憎みます。
けれど憎しみをあらわにすることはなく、両親を無視することで抵抗します。
……というような、加奈子の行動の理由付けが原作にはあったのですが、
映画では父親に殺されかけても思わせぶりな態度を取るイカレた娘に見えちゃいます。
妻夫木聡演じる藤島の元部下も、原作ではヘラヘラした嫌な奴ではありませんでした。
オダギリジョー演じる警察官にいたっては、ただの殺人好きに。
原作だと、病弱な子どもを抱えてやむを得ず闇の仕事を引き受けています。
それで殺人に目覚めたという一文はありましたが、
妻子への愛情はしっかり感じられる原作だったので、映画には「ひえ~っ」。
もっとネタバレ。
犯人は中学の担任で、小学生の自分の娘が加奈子に売春させられていたと知ったから。
担任が加奈子に手をかけるシーンでは、
加奈子が「潮時かな」(「引き際かな」だったかも?)とつぶやきます。
自分が殺されることを知っているかのような、
それでもいいと思っているかのようなつぶやきが、映画では無し。
感情を持たない人間ばかり集めたよそおいに愕然。
ありゃ、原作は全然好きじゃないと思っていたのに、
こうして書いてみると、意外に良い原作だった?
いやいや、やはり好きじゃない原作は、好きな映画にはならないということか。
観たことは忘れない作品ではあるけれど、
同監督の作品としては、心を捉える部分が少なくて、
痛いシーンのみが焼きつけられてしまいました。