夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『私の、息子』

2014年07月20日 | 映画(わ行)
『私の、息子』(英題:Child's Pose)
監督:カリン・ペーター・ネッツァー
出演:ルミニツァ・ゲオルギウ,ボグダン・ドゥミトラケ,イリンカ・ゴヤ,
   ナターシャ・ラーブ,フロリン・ザムフィレスク,ヴラド・イヴァノフ他

友人と肥後橋でランチの後、雨の中を歩いて梅田まで。
お茶を2軒ハシゴして友人たちと別れ、私はふたたびシネ・リーブル梅田へ。

それにしてもこのところの梅田スカイビルは欧米人観光客の多いこと。
なんでこんなに多いのかと思ったら、
イギリスの出版社が選ぶ“TOP 20 BUILDINGS AROUND THE WORLD”のひとつに選ばれたのだそうで。
ほかに選ばれた建築物を見てみれば、パルテノン神殿、アンコール・ワット、
サグラダ・ファミリア、コロッセオ、メトロポリタン大聖堂などなど。
そうか、スカイビルはパルテノン神殿に並ぶのかとビックリ。
建築家の原広司先生、そんな凄い方だとはつゆ知らず、すみませんでした。

第63回ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞したルーマニア作品。
第86回アカデミー賞外国語映画賞にもルーマニア代表として出品されましたが、ノミネートに至らず。

ルーマニアの首都ブカレストに暮らす熟年女性コルネリア。
建築家として名を馳せた彼女には、セレブな知り合い多数。
彼女の誕生祝いのパーティーには各界の大物が顔を見せる。

そんな彼女の悩みの種は30歳になる一人息子バルブ。
コルネリアと顔を合わせるたびに悪態をつき、わがままの言い放題。
彼が子連れの女性カルメンと同棲中なのも気に入らないから、
家政婦のクララにはバルブの家にも行かせて状況を報告させている。

ある日、そのバルブが交通事故を起こす。
前を走る車を160km/hで追い抜こうとした折りに
飛び出してきた少年を轢いて死なせてしまったのだ。

息子を刑務所に入れるわけにはいかない。
コルネリアは金とコネを利用して警察の捜査に介入、裏工作に奔走するのだが……。

なんとも嫌な話です。
冒頭、家政婦に息子の彼女の悪口をうだうだ言うところも最悪なら、
パーティーの席で肩書きがすべてとばかりに列席者を紹介するのもヤな感じ。
それを受けて「無名の誰某」なんて自己紹介する人はアッパレですが、
そうは言ってもそんな席にいるのはセレブな人ばかり。

不愉快な気持ちに駆られている間に問題の交通事故が起きます。
息子からさんざんな言い様をされているのに、
息子がすべての母親は、ひたすら息子のために頑張ります。
警察に顔が利くエライさんに連絡を取り、指示を仰いだり、
目撃者に証言を訂正してもらうために取引を持ちかけたり。

母親に「死ねよ」などと始終暴言を吐いているくせに、
半ケツ状態でマッサージしてもらう息子の姿にオエッ。マザコンもいいところ。
息子の彼女が赤裸々に語る「息子と別れたい理由」にも愕然。

こうして自分たちの都合しか考えなかった母子が被害者宅を弔問、
話しているうちに心を入れ替える……と受け取れなくもないですが、
母親といえば息子の自慢話に終始して、息子の将来を奪わないでくれと泣き叫ぶばかり。
あんな話をされて寛大な気持ちを持てますか。
なのに被害者の父親の最後の態度のなんと素晴らしいことよ。

そのやりとりを見た母親の内心はどうだったのか。
彼女の深い溜息をどう取るか。
観る人がそれぞれ解釈すればいいものなのでしょうが、
私には良心はこれっぽっちも感じられませんでした。

こんなに不愉快な気持ちにさせる演技力に脱帽。
英語タイトルの“Child's Pose”、すなわち「胎児の姿勢」。
これと併せて邦題の意味を考えてみると、深く、難しい。

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