夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『60万回のトライ』

2016年03月04日 | 映画(ら行)
『60万回のトライ』
監督:朴思柔
ナレーション:根岸季衣

元町映画館にて“神戸スポーツ映画祭!”の3本目。
サッカー卓球と来たあとは、ラグビーの話。
2013年の日本作品。

2010(平成22)年4月、ラグビーの春の選抜大会決勝で、
最強と言われる東福岡高校に大善戦した大阪朝鮮高級学校。
本作はソウル出身のパク・サユ監督が来日、
3年間に渡って朝鮮高級学校ラグビー部に密着取材したドキュメンタリーです。

本名を名乗り、朝鮮学校にかようことを選んだ彼ら。
彼らの素顔は、当たり前のことですが、普通の高校生と変わりません。

いつも不思議に思っていました。
さまざまなスポーツで強豪と言われるチームは、
全国各地から優秀な選手を採っていることがほとんど。
朝鮮高級学校はそうではない。なぜにこんなに強いのか。

ふと思い出す、映画の中の台詞。
「人生のいちばんの重荷は、背負うべきものが何もないこと」。
生まれたときから差別を受けてきたであろう彼らに、
「背負うものがあるから強いんだよね」などという言葉は軽々しく口にはできませんが、
彼らは自分に誇りを持ち、自分のためだけに生きているのでもない。

たかが高校生の運動会を観るために何晩も徹夜して並ぶ近所の人。
競技場まで足を運び、懸命に応援する在日コリアンの人々。

在日コリアンの現状を声高に叫ぶ作品ではなく、
ラグビー部員の日常が描かれています。
部員同士で練習方法をめぐってつかみあいの喧嘩になりそうなときもありますが、
すっきりするまで激論を交わし、納得すれば抱き合う。
そんな光景に、いいなぁ高校生、と思うのでした。

彼らに笑顔がもたらされ続けることを願ってやみません。

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