夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『火の山のマリア』

2016年03月20日 | 映画(は行)
『火の山のマリア』(原題:Ixcanul)
監督:ハイロ・ブスタマンテ
出演:マリア・メルセデス・コロイ,マリア・テロン,マヌエル・アントゥン
   フスト・ロレンソ,マルビン・コロイ他

先週の日曜日にシネ・リーブル梅田にて2本ハシゴ。その1本目。

グアテマラ/フランス作品。
原題の“Ixcanul”はマヤ人の言語であるカクチケル語で「火山」の意。
グアテマラの映画を観るのはおそらく人生初。
これを観逃したら一生観る機会がないかもと思って観に行きました。

ウィキペディアによれば、グアテマラの映画産業の規模は極小で、
映画俳優というものはほぼ存在しないのだそうです。
グアテマラ人俳優というだけでも世の中にいないに等しいのに、
さらにグアテマラの一民族であるマヤ人俳優などいるのか。

グアテマラ人のハイロ・ブスタマンテ監督は、マヤ人の土地で幼少期を過ごし、
グアテマラの広告会社で働いた後、ヨーロッパで映画製作を学んだそうです。
本作を撮るにあたり、アマチュア演劇に参加していた母親役の女優と出会い、
彼女のつてでロケ地探し。娘役はオーディションにて発掘。

現地では、「映画スタッフ募集」と声をかけると人がまったく集まらず、
「仕事人募集」と名目を変えてみれば人が集まりすぎて困ったという逸話が可笑しい。
また、現地には映画館が存在しないため、巡回バスで上映したとか。
もうこれを聞いただけで本作を観る価値ありと思えます。

中米グアテマラの火山の麓、カクチケル語を話すマヤ人が暮らす地域。
17歳の少女マリアは両親とともに暮らしている。
家族そろって真面目に働いてはいるが、借地で農業を営むということは、
作物が収穫できなければただちに土地を手放さざるを得ず、苦しい毎日。
特に蛇に土地を荒らされることが多く、いい手はないものかと考えあぐねている。

そんな家族のもとへ、土地の所有者であるイグナシオから結婚の申し込みが。
妻と死別したイグナシオがマリアを見初めたのだ。
これで貧困生活からも脱出できると、両親は大喜び。

しかし、マリアは同年代の少年ペペに惹かれていた。
もうじき渡米するとはりきるペペは酒飲みのろくでなしだが、
親が決めた結婚に乗り気になれないマリアには、
ペペの話を聞くと、夢の世界にいるように思える。
処女を捧げればアメリカに連れて行ってやると言われ、その条件を呑んでしまう。

ところがペペはマリアを残して旅立ってしまったどころか、
後に残されたマリアは妊娠していることがわかり……

グアテマラ作品自体が珍しいので、さまざまなことに目を引かれます。
民族衣装、慣習、植物や生物。
ヤリたがらない豚にヤラせるためにラム酒を飲ませるところは笑いました。

せっかく玉の輿に乗るはずが、娘が妊娠。
最初は堕ろせと言っていた母親ですが、
まじないのようなもので「この子は生まれる運命にある」と気持ちを一転させたり。
その後は新生児の違法売買にも話が及び、ただののんびりした作品ではありません。

母娘役ともに映画出演はもちろん初めてでしょうが、全裸もいとわぬ肝っ玉。
今後さまざまな作品が生まれますように。

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