夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『マンガをはみだした男 赤塚不二夫』

2016年06月11日 | 映画(ま行)
『マンガをはみだした男 赤塚不二夫』
監督:冨永昌敬
出演:赤塚不二夫,赤塚りえ子,荒木経惟,石ノ森章太郎,ちばてつや,土田よしこ,古谷三敏他

十三・ナナゲイで招待券を使って観た3本目。

赤塚不二夫生誕80周年記念作品。
監督は『乱暴と待機』(2010)、『目を閉じてギラギラ』(2011)の冨永昌敬。
赤塚不二夫のドキュメンタリーと聞き、笑うつもりで観に行きましたが、
冒頭の「笑われることに命を懸けた」というナレーションでなぜか涙ぽろり。

父親が特務警察官だったゆえ、1935(昭和10)年に満州で生まれた赤塚不二夫。
終戦を迎えた1945(昭和20)年、不二夫は10歳。
父親は軍事裁判にかけられてシベリア抑留の憂き目に。
残された母親と不二夫を含む6人の子どもたちは日本へ引き揚げ。
しかし幼い弟妹のうち3人を失い、残ったのは3人。
しばらくは母の実家に世話になり、貧窮のために子どもたちは新潟へ。
大変な幼少時代を過ごしたようです。

こんなふうに始まった彼の生涯が、当時の映像とアニメーション、
彼と交流のあった多くの漫画家や編集者などの話を交えて綴られています。

観客席から大笑いが起きる場面があるかと思えば、
アル中で幻視に悩まされる場面などは痛々しい。
幸せな人生だったかどうかは本人にしかわからないことですが、
本作で彼について語る人々の表情は皆やわらかく、
いかに愛すべき人柄であったかが伝わってきました。

それにしても彼は、若いころはすごい美少年だったのですね。
あんなギャグ漫画を書ける人だとは誰も思わず、
繊細な少女漫画で売り出すことをどの編集者も考えていたそうです。

どんなときも「没法子(メイファーズ)」。これでいいのだ。
いつまでも彼と彼の作品が愛され続けますように。

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