夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ヒメアノ~ル』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の22本目@なんば)

2016年06月02日 | 映画(は行)
『ヒメアノ~ル』
監督:吉田恵輔
出演:森田剛,濱田岳,佐津川愛美,ムロツヨシ,山田真歩,駒木根隆介,大竹まこと他

TOHOシネマズの1ヵ月フリーパスポート有効期限の土曜日。
この日はダンナがタイ人の結婚披露宴に出席するためにタイヘ。
というわけで、いつもの土曜日の外食はないから、
午前中は友だちと会い、午後から深夜までなんばで観られるだけ観ることに。

『机のなかみ』(2006)を観て以来、かなり気になる吉田恵輔監督。
ひねりが加えられていても、たいていはほのぼの、ハッピーエンド。
本作もそうだろうと安心して観に行ったら、真逆の展開で衝撃的。

ビル清掃会社でアルバイトする青年・岡田進(濱田岳)。
これといってしたいことのない退屈な毎日について、
風変わりな職場の先輩・安藤勇次(ムロツヨシ)に話すと、
安藤は「僕は毎日恋をしているんだ」と言う。

安藤の片想いの相手は、職場近くのカフェの店員・阿部ユカ(佐津川愛美)。
彼女のあまりの可愛さに、住む世界がちがうと岡田は唖然。
安藤に「絶対無理でしょ」と進言するが、安藤はあきらめる様子がない。

そのカフェの客の中に高校時代の同級生・森田正一(森田剛)の姿が。
安藤によれば、森田もユカを狙っているらしく、
ユカを守るようにと命じられた岡田に、ユカのほうから話しかけてくる。
森田が店に現れてからというもの、ユカの周囲で妙なことが起きていると聞かされ……。

冒頭から森田の不気味さは目につくものの、岡田と安藤のやりとりが面白く、
岡田とユカとの関係を描く、ちょっと大人向けのラブコメ。
ところが前半50分が終わったところから恐ろしいスリラーに。
タイトルクレジットもここで登場するという面白い構成。

高校生のときに陰惨ないじめに遭っていた森田。
何も考えないようにしなければ生きていられなかった彼は、
人を殺すことにも何も感じないようになります。
いじめが人の心に落とす陰を思わずにはいられません。

「ヒメアノール」とは原作者の造語で、
「アノール」はいわゆるトカゲのことだそうな。
小さな体であるヒメトカゲは、猛禽類の餌食に。
つまりは強者の餌食となる弱者を指すのですね。

強者に食い物にされ、さらに身を縮こめて生きてきた弱者。
人が変わって残忍になった森田が残忍になりきれなかった瞬間。
ラストシーンが心に響きます。

V6の森田くんの鬼気迫る演技が圧巻です。
北川景子同時期に知った佐津川愛美。
年齢は2歳ちがい、デビューも同じぐらいなのに、前者はその後ブレイク。
同じくらい可愛いのに、後者がブレイクしないのがかねてから疑問でした。
佐津川愛美のほうがどこか陰があるのかな。
今回の濡れ場はなかなか凄く、こりゃ北川景子には無理だなと思ったりして。
あ、いつもは笑えないムロツヨシ、これはよかったです。

これまでの吉田恵輔監督作品とは異なり、好きだとも言えないけれど、
非常に面白く、いろいろ考えさせられて心がざわつく作品です。

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