夜な夜なシネマ

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『教誨師』

2019年02月08日 | 映画(か行)
『教誨師』
監督:佐向大
出演:大杉漣,玉置玲央,烏丸せつこ,五頭岳夫,小川登,古舘寛治,光石研他

これも前述の『マイ・サンシャイン』同様、
昨年の公開時にテアトルグループの劇場で観そびれたやつ。
塚口サンサン劇場で上映している間に行かなくては。
漣さんが急逝してからまもなく1年経つのですね。
本作は彼が初めてプロデュースも務めた作品で、かつ最後の主演作品。

教誨師とは、拘置所内で受刑者に対して教え諭す宗教家。
死刑囚と面会できる唯一の民間人なのだそうです。

牧師の佐伯(大杉漣)は月に2度、教誨師として拘置所を訪れる。

面会の相手は6人。
目を瞑ったままでまったく話をしようとしない鈴木(古舘寛治)。
関西弁でまくしたてる美容師の野口(烏丸せつこ)。
キリスト教に改宗したいというホームレス、進藤(五頭岳夫)。
訥々と自分のことを語る小川(小川登)。
気前のいいヤクザの組長、吉田(光石研)。
大量殺人犯の生意気な若者、高宮(玉置玲央)。

彼らが自らの罪ときちんと向き合い、悔い改めて、
死を迎えられるようにするのが佐伯の仕事。
実兄が殺人者だった佐伯は、時にはその話を受刑者にする。
自身の言葉が正しいものなのかどうか迷い、葛藤する佐伯だったが……。

死刑囚のドキュメンタリーならば過去にいろいろ観てきたはずなのに、
初めて知ることがいっぱいあって驚きました。
死刑囚は服装も髪型も自由、刑務作業もしなくてよい。
死をもって償うから、死刑が確定すればある程度の自由が許されるということでしょうか。

刑の執行が当日の朝に本人に知らされるのは『獄友』(2018)で知りました。
毎朝彼らがどう感じるのかを想像すると、キューッと胸が痛みます。
殺人犯の手に掛かった被害者のことを思えば、
そんな恐ろしさぐらい感じて当然だとも思ったりするわけですが、
それが冤罪だった場合にはあり得ない。
本作の死刑囚たちは冤罪ではないという設定だけれども、
自分に刑が執行されるとわかったときのある人物の演技が凄いです。

この本のレビューにも書きましたが、
私は漣さんの演技が上手いなぁと思ったこと、正直に言うとありません。
かといっていかにも演技をしているふうでもない。
教誨師を演じる漣さんは、まるで教誨師そのものでした。
つまりこれこそが演技が上手いということなのですよね、きっと。

あらためて、漣さんのご冥福をお祈りします。

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