夜な夜なシネマ

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『燃ゆる女の肖像』

2021年01月07日 | 映画(ま行)
『燃ゆる女の肖像』(原題:Portrait de la Jeune Fille en Feu)
監督:セリーヌ・シアマ
出演:ノエミ・メルラン,アデル・エネル,ヴァレリア・ゴリノ,ルアナ・バイラミ他
 
TOHOシネマズ西宮にて、夕刻から2本ハシゴの1本目。
 
このタイトルだから、楽しくはなさそう。でも評判は良いみたい。
どういう作品なのかも知らないまま観に行き、
鑑賞後に調べたら、第72回カンヌ国際映画祭クィア・パルム賞受賞作。
この賞を女性監督が受賞するのは史上初だそうです。
当然と言っちゃなんですが、セリーヌ・シアマ監督もカミングアウトしています。
『ぼくの名前はズッキーニ』(2016)はシアマ監督の脚本。
 
18世紀のフランス。
教鞭も執る画家マリアンヌは、自分をモデルに学生たちにスケッチさせているところ。
ふと教室の後方に目を遣ると、そこにはかつて自分が描いた絵がある。
奥のほうに置いてあった彼女の絵を学生たちが見つけて前に持ち出したようだ。
学生から絵のタイトルを問われ、マリアンヌは答える、「燃ゆる女の肖像」だと。
 
そこからマリアンヌの回想に。
 
ブルターニュの孤島に佇む屋敷を訪れたマリアンヌ。
目的は、伯爵夫人の依頼により次女エロイーズの肖像画を描くこと。
エロイーズは親の決めた相手とまもなく結婚する予定。
長女が同様の縁談話のせいで自殺したため、次女の結婚が繰り上げられたのだ。
 
修道院で生活していたエロイーズはこのような理由で突然呼び戻され、
何もかもに怒りを感じて心を閉じている。
マリアンヌよりも前に肖像画を描きにやってきた画家には
エロイーズはついぞ一度も顔を見せることなく、画家は描くのを断念したらしい。
 
それゆえ伯爵夫人はマリアンヌが画家であることも訪問の目的も伏せろと言う。
致し方なくマリアンヌはエロイーズの散歩の同行者を演じ、
そのときに目に焼き付けたエロイーズの顔や姿を屋敷に戻って密かに描く。
 
やがてマリアンヌに信頼を置くようになるエロイーズ。
伯爵夫人の留守中には、住み込みの家政婦ソフィーもまじえて楽しく過ごすのだが……。
 
女性であるがためにさまざまな制限を受けて抑圧されていたことがわかります。
相手と会ったこともないまま決められた結婚。
せめて少しは相手のことを知りたいのに、何も知らせてもらえない。
 
家政婦もどこかで会った男性の子を身ごもっていますが、産めない。
かといってまともな病院に行くこともできず、
怪しげな方法で堕胎できる人を頼ります。
それに付き添うことで、マリアンヌやエロイーズとの絆は深まる。
 
画家も男性と女性では描ける題材が異なる。
男性は女性の裸体を描くことは許されても、その逆は無理。
だから、男性の名を騙って描いたりするのですねぇ。
 
恋に落ちながらこの時代には絶対に成就しない想い。
それでも心はどこかで繋がっていたことを思わせるエンディング。
なんとも言いがたい余韻があります。

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