夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『クレオの夏休み』

2024年08月31日 | 映画(か行)
『クレオの夏休み』(原題:Ama Gloria)
監督:マリー・アマシュケリ
出演:ルイーズ・モーロワ=パンザニ,イルサ・モレノ・ゼーゴ,アルノー・ルボチーニ,
   アブナラ・ゴメス・ヴァレラ,フレディ・ゴメス・タヴァレス,ドミンゴス・ボルゲス・アルメイダ他
 
昨年の3月からずっと、毎月最終日曜日の晩に動物園前の動楽亭でおこなわれる落語会に行っていました。
若手落語家の笑福亭笑利さんの“20ヶ月連続古典落語根多下ろし公演”。
毎月ネタ下ろしだなんて無謀なことをするもんだと思っていましたが、応援したくて皆勤賞を目指す。
ところが今年3月に母が倒れて入院、その月はさすがに行けず、皆勤賞が消えました。
翌4月に母が亡くなり、実家の片付けなどに追われて動物園前からは足が遠ざかる。
 
母が存命だったときは、動物園前に行くたびに「今から寄席だよ」「楽しんでね」とか、
終演後に「帰るね」「気をつけて。おやすみ」などと電話やLINEのやりとりをしていたものだから、
そのときのことを思い出すと妙に寂しくなってますます足が遠のく。
そろそろ行こうかなと思ったときにはチケットが完売していたりして、
あぁ、このまま私は笑利さんとオサラバかしらなどとも思っていました。
 
しかしあんなに応援したいと思っていたのに、このままサヨナラでいいのかと思い直し、
8月は久しぶりに行ってみることにしました。
演目は聴きたかった『皿屋敷』だし、ゲストのアキナはまだ生で見たことがなかったし。
 
結果、思いきって行ってよかった。やっぱり応援したい噺家さんです。
 
で、動物園前に行く前に映画を1本ぐらい観たいと思い、シアターセブンへ寄りました。
 
フランス作品。
監督はこれが長編デビュー作となるマリー・アマシュケリ。
クレオを演じるルイーズ・モーロワ=パンザニはこれまで演技未経験者らしい。
なんですかこの愛らしさは。もう今から彼女の今後が楽しみで楽しみで。
 
生まれてすぐに母親を亡くした6歳の少女クレオ。
アフリカ・カーボベルデ出身の女性グロリアがナニー(乳母)として彼女を育てている。
クレオはグロリアのことが大好きでたまらない。
 
ところがある日、グロリアの母親が亡くなったと連絡が入る。
故郷に我が子を残したままパリに来ていたグロリアは、これを機会に里帰り。
もうフランスに戻ってくることはないと言う。
悲しみに暮れるクレオに、グロリアは夏休みに遊びに来るように言い残す。
 
グロリアと約束したのに、クレオがひとりでカーボベルデに行く話をなかなか進めてくれない父親。
クレオから嘘つきと責められ、ついに父親も決心。
遠くカーボベルデのグロリアに会いに行き、ひと夏を過ごすクレオだったが……。
 
どうしたらこんないい子に育つのだろうと思うくらい、クレオは愛らしい子。
「子どもらしい」という言い方は語弊があるかもしれませんが、
ませて子どもらしくない子どもじゃなくて、めちゃめちゃ子どもらしい子ども。
 
シングルファーザーの父親も、出番は多くないけれど善人だとわかる。
父親とクレオのやりとりも思わず微笑んでしまう素敵なものです。
こういうシーンを見ると、人にまかせっぱなしにせず、でもまかせられるところはまかせて、
子どもの表情をよく見ながら日々を送るのがいかに大切かわかるような気がします。
 
カーボベルデに行くと、そこにはグロリアだけではなく、彼女の家族がいる。
長女はすでに大人で妊娠中。心にも余裕があるからクレオにも優しい。
だけど長男のセザールはまだ少年で、生まれたときから不在だった母親がいきなり帰ってきたうえに、
よその国でまるで我が子のように育てたクレオが遊びに来たものだから面白くありません。
 
やがて長女が出産すると、グロリアも孫の面倒ばかり見るようになる。
赤ちゃんは可愛い。でもグロリアを赤ちゃんに取られたような気がして、クレオは時に暴挙に出てしまう。
それがいけないことだとクレオはわかっていて、泣きじゃくる姿はたまりません。
 
こんなに幼いのに、きっと母親のことなんて何も覚えていないだろうに、母親のことを大事に思う気持ち。
それを演技で表現出来るこの少女は、いったいどんな感受性の持ち主なんだと驚きます。
 
少女のひと夏の思い出を描いた作品って、「珠玉の」と言いたくなるものが多いですね。
『コット、はじまりの夏』と並んで好きな作品になりました。

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