夜な夜なシネマ

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『動物界』

2024年11月24日 | 映画(た行)
『動物界』(原題:Le Regne Animal)
監督:トマ・カイエ
出演:ロマン・デュリス,ポール・キルシェ,アデル・エグザルコプロス,トム・メルシエ,ビリー・ブラン他
 
なんばパークスシネマにて、前述の『国境ナイトクルージング』の次に。
 
監督はこれが長編2作目のフランスの新鋭トマ・カイエ。
先日観た『スパイダー/増殖』も本国フランスで大ヒットを飛ばしたそうですが、本作も大ヒットしたらしい。
こんな変な作品がヒットするってどういう国なのかと思うけど、はい、面白かったです。
 
フランソワとその息子エミールは入院中の妻ラナに面会するため、愛犬を連れて車を走らせる。
巷では謎の突然変異によって人間の体がさまざまな動物に変わるという奇病が蔓延中。
ラナもその奇病に冒されており、エミールはまるで動物の顔をした母親を受け入れられない。
病院に行きたくないと言うとフランソワが説教を始め、エミールは思わず車から降りるが、
前方を走る患者収監車から鳥の姿をした男が飛び出して大騒ぎとなり、エミールも恐怖を感じて車に戻る。
 
ラナの主治医から南仏に患者用の隔離治療施設がまもなく完成するとの説明があり、
フランソワとエミールもその近くに一時的に住まいを移すことに。
料理人のフランソワは近所の食堂に職を得て、エミールも父親の仕事の都合だと偽って地元の高校に転入する。
 
数日後、嵐に見舞われた夜が明け、患者たちを移送中のバスが悪天候のせいで転落事故を起こしたとの連絡が。
ラナを含む奇病患者の行方がわからなくなっているとの報告にフランソワは気が気でない。
立ち入りが禁止されている森に忍び込んでラナを探そうと考えるが、エミールはその気なし。
実はエミールにも変異の兆候が見えはじめ、彼はその事実をフランソワに打ち明けられずにいて……。
 
ある日突然自分の体に変化が起きる。
爪が割れたり歯が抜けたりしたかと思えば牙が生えてきたり、背骨が曲がって毛深くなったり。
その変化は一度に訪れるわけではなく、徐々に自分が動物になってゆきます。
自転車に乗れなくなる、音に敏感になってイラつく、だんだん言葉が話せなくなる。怖い。
 
ラナ探しに協力を申し出る憲兵隊の女性ジュリアにフランソワがつぶやく言葉が切実です。
「(ラナを)失うのは怖いけど、会うのも怖い」。
 
あれほど「新生物」に嫌悪感を見せていたエミールが、自分もそうなって初めてわかること。
鳥人間のフィクスと心を開き合い、守り守られる姿はじんわり心に染みる。
また、追われて隠れていたエミールに完全に動物と化したラナが会いに来るシーンには、
母親はどんな姿になろうが息子のことを忘れないのだと思わされました。
 
ラブコメの常連だったロマン・デュリスにはもう見る影もないけれど、こんな役も似合っています。
エミール役のポール・キルシェも変わりゆく自分への不安が感じられて絶妙の演技。
 
ビジュアル的には凄く気持ち悪いのに、後味は悪くありません。

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